【6月7日 AFP】魔術を使って息子を殺したと疑われた女性が火あぶりで殺害される事件があったパプアニューギニアなど南太平洋の島国で、魔術や魔力を信じる傾向が高まっていると、専門家らが警告している。

 ソロモン諸島国立博物館(Solomon Islands National Museum)の元館長、ローレンス・フォアナオタ(Lawrence Foana'ota)氏は、オーストラリアの首都キャンベラ(Canberra)で開かれる魔術信仰の問題点を協議する会議を前にAFPの取材に応じ、ソロモン諸島で魔術を信じる傾向が高まっていることへの危惧を示した。魔術によって何らかの経済的な利益を得る人々がいることが原因だという。こうした傾向について、特に若者の間で早い段階で手を打たなければ、パプアニューギニアのようにソロモン諸島でも実際に殺人に走る人々が出てくると同氏は懸念する。

 パプアニューギニアでは今年2月、魔術を使って6歳の息子を殺した疑いをかけられた20歳の女性が、服をはぎとられて縛られた上、見物人の前で火をつけられて殺害された。その後も4月に、黒魔術を使ったとして高齢の女性が公開処刑で首をはねられる事件が起きている。

 2月の事件を受けてパプアニューギニア政府は、暴力犯罪の撲滅には厳罰が必要だとして現行法を改定し、死刑を復活させる方針を打ち出しているが、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)や国連(UN)はこれを批判している。

 文化研究機関、メラネシアン研究所(Melanesian Institute)のジャック・ウラメ(Jack Urame)牧師は、パプアニューギニアに広がる魔術信仰を一掃するために、キリスト教団体はもっと大きな役割と果たせるはずだと語る。「世代間の断絶が原因で、キリスト教の価値観が次世代に引き継がれていない。それで人々は病気や死の理由付けとして伝統的な魔術信仰に回帰している」

 またキャンベラで共同議長を務めたオーストラリア国立大学(Australian National University)のミランダ・フォーサイス(Miranda Forsyth)氏は、パプアニューギニアやソロモン諸島、バヌアツなどでは、人々が魔術を使ったと非難されることを恐れて事業などで成功したがらないため、これが経済発展の妨げになっていると指摘した。(c)AFP