【6月6日 AFP】フィリピンで2年前、道路を横断中だった少女2人を助けようとしてオートバイにはねられ顔面に大けがをし、英雄犬とたたえられることになった雌の雑種犬「カバン(Kabang)」が、8か月にわたる米国での治療を終えて3日、退院した。

 カバンは2011年、交通量の多い交差点を渡っていた飼い主の幼い娘とめいにオートバイが向かってきたのを見た瞬間、オートバイの前に身を投げ出して少女たちを守った。しかしこの事故でカバンは鼻先と顎の一部を失い、まぶたも負傷した。事故当時、カバンは妊娠中だった。

 地元メディアがこの事件を報じたことから、カバンはフィリピンの英雄となり、インターネット上でも大きな話題を呼んだ。カバンに米国で治療を受けさせる費用を募ろうと、米ニューヨーク(New York)の看護師カレン・ケンゴット(Karen Kenngott)さんが中心となってウェブサイトや米SNSフェイスブック(Facebook)のページ、マイクロブログのツイッター(Twitter)のアカウントが開設された。総額2万ドル(約200万円)以上の寄付が集まり、カバンはカリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)の動物病院に入院して治療を受けていた。

 カバンの治療は困難を極め、担当の獣医チームにはUCデービス校のがん、感染症、歯科、軟組織の手術の専門家が集められた。大学側の声明によると、カバンの顔面再建は完全ではないが、手術によって感染症リスクは低下し、通常生活を送れるまで回復した。カバンは、がんとイヌ糸状虫症も患っていたが、どちらも治癒したという。

 カバンは今週中にも民間機で故郷のフィリピンに帰還する予定だ。フィリピン南部のスラムに暮らす飼い主のルディ・ブンガル(Rudy Bunggal)さんは4日、AFPの電話インタビューに応じ、「帰ってきたカバンを見たら、泣いてしまう。あの子は家族同然だから」と語った。(c)AFP