【3月19日 AFP】米オハイオ(Ohio)州で2012年8月に起きたアメリカンフットボール部の高校生ら2人が、同じ学校に通う少女に性的暴行を加えたとされた事件の裁判は17日、少年らに保護処分の判断が下され幕を閉じた。この少年犯罪の裁判は各メディアから高い注目を集め、同州の小さな町ストゥーベンビル(Steubenville)には多くの報道陣が詰めかけた。

 この事件では、ビデオカメラで撮影された事件現場の動画がソーシャルメディアサイトに投稿されネットで広まり、大きな注目を集めていた。投稿されたある動画の中で少年たちは、強姦(ごうかん)の様子を目撃したことについて、笑いながら「(少女は)小便をかけられて当然」などと話していた。別の動画や写真では、今回審理が行われた少年2人が、ほぼ全裸で意識不明の16歳の少女の手足を持ち上げているところが捉えられていた。

 泥酔し意識を失った16歳の少女の手足を持って運ぶ様子は衝撃的だが、「若者たち」「アルコール」「カメラ」という要素が同時に揃うことは決して珍しいことではない。

 露骨で性的、もしくは屈辱的な画像がソーシャルメディアを通じてあっという間に広まったことで、社会的に悲惨な状況に置かれてしまった10代の若者たちは数千人存在する。

 人に恥をかかせる、悪意のある行為──法に触れる可能性もある──の瞬間を撮影したいという衝動に駆られることは、デジタル時代に育ち、常にスマートフォンを携帯している現代の若者たちにとっては抑えがたいものだ。そして同時に、若者の性への興味と、恐喝や嫌がらせ、児童ポルノといった犯罪行為との間に明確な線引きをしなければならない親たち、教育者や警察にとっても複雑な問題でもある。

 そうした映像の大半は、若者たちが交際相手や仲間内のみで共有するつもりで撮ったもの、あるいは冗談のつもりで撮影したものだという。

 だが、そのうちの誰かが「送信(転送)」ボタンを押したら最後、インターネットの力を介して10代の若者たちの間で広まっていく。オンライン上に流出した画像については完全に制御することが不可能なため、被るダメージの大きさは未知数となる。

■自分の過去からは逃げられるのか?

 いじめられた経験を持つ10代の若者と大人たちを支援するサイト、「Bullyville.com」によると、16~18歳の少女たちから「ネット上から写真を消すことができない。自殺したい」との相談が多く寄せられているという。

 米独立系調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が先ごろ実施した調査によると、米国の12~17歳の子どもたち6人に1人が、全・半裸の知り合いの映像および画像を受け取ったことがあるという。そして16~17歳になると、その割合は3人に1人に跳ね上がる。ただし、自分自身のそうした写真を「送ったことがある」と認めた子どもは、わずか2%にすぎない。

 同センターで10代の若者とテクノロジーに関する研究を担当するアマンダ・レンハート(Amanda Lenhart)氏は、「この問題について覚えておかなければならないのは、こうした画像(映像)を世間に広めるために多くの人間は必要ない」と話す。その一面から見ても、現代の若者たちは、親の世代よりもずっと難しい時代を生きている。

  「かつてはパーティーなどで軽率な行動を取ったとしても、周辺のほんのわずかな人たちが目撃するだけで済んだ。そして自然に忘れ去られたり、頼んで秘密にしてもらうこともできた。反省することで、元通りの生活を続けることができたのです」

■「過去から逃れるのは、今や困難なこと」――深刻な影響

 オハイオ州ストゥーベンビルの強姦事件は単なる若者の無分別な行動ではない。少年らが少女の服を脱がせて写真を撮り、その写真が急速に広まったという事実は疑う余地もなく、少女の回復をより困難にしている。

   「Cyber Bulling:Bullying in the Digital Age(ネットいじめ:デジタル時代のいじめ)」の共著者、パティ・アガツトン(Patti Agatston)氏は「性犯罪の被害を受け、その上さらにその画像が共有されるという深刻な事件は、(被害者に)重大な影響を及ぼし得る」と語る。「不安神経症や心的外傷後ストレス障害といった問題が生じる可能性もある」という。

 2012年11月の証言で少女の母親は、同8月11日の事件以降、少女は学校で仲間外れにされ、毎晩泣きながら寝ていると述べた。

 しかし、こうした悲痛な画像は一方で問題を表面化させ、一線を越えた者たちを罰することを容易にする。

 オハイオ州のマリアンヌ・ヘムメター(Marianne Hemmeter)司法次官補は13日の冒頭陳述で、強姦罪に問われているフットボールの選手だった2人の高校生は、少女を「おもちゃ」のように扱い、友人らに少女の写真を送信したことによって、少女を再三にわたって傷つけたと述べた。

 検察側は泥酔した少女が性行為について合意することは不可能だったと主張。これに対し、少年の弁護士らは異議をとなえ、少年らの行動は強姦には当たらないと主張していた。

 子どもへの犯罪に関する研究機関Crimes Against Children Research Centerが行った最近の調査によると、未成年者が制作した性的な画像(映像)のうち、2008~2009年に警察が捜査対象としたものは約3500件に上る。うち約6割は、成人が未成年者に性的に関わったり、若者が脅迫やその他の犯罪行為、悪意のある行為に関与したり、無防備に画像をネット上に流出させたりなど、状況を「悪化させる」ものだった。また63%は携帯電話間で送信されていただけで、インターネット上には出回っていなかったという。(c)AFP/Mira Oberman