【9月24日 AFP】ドイツ・バイエルン(Bayern)州の州都ミュンヘン(Munich)で開幕した世界最大のビールの祭典「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」――およそ800万杯のビールが毎年消費されるこの祭典では、ありとあらゆる物が、遺失物センターに届く。

 昨年のオクトーバーフェストの遺失物は4900個に上った。高級な品から目を丸くするようなものまでさまざまだ。衣類1220着、携帯電話420個、メガネ380個、傘70本…。さらに、メガホン、犬、バイキングのかぶと、そして結婚指輪5つまでもが見つかった。

 遺失物管理局のマイク・ミューラー(Mike Mueller)局長(40)によると、遺失物のうち、持ち主が見つかったのは5個につきわずか1個の割合。

「問題は、酔っぱらった人は翌日に初めて落し物に気付くこと」と、ミューラー氏は説明する。「訪問者の多くは観光客で、すでに立ち去った後で、引き取りに来ることができないんだ」

 ミューラー氏は携帯電話をなくした民族衣装姿の女性の情報をメモに書きながら、例年、オクトーバーフェストの開幕直後には落とし物は少ないのだと語った。これまでの落とし物はまだ数十個だが、これからは急ピッチで増えるのだという。

「これまであらゆる落とし物を見た。数千ユーロ入った財布やダイヤモンドの婚約指輪など、人びとはありとあらゆる高価な物を落とす」とミューラー氏。よく見る落とし物は、鍵やジャケット、携帯電話、財布だという。

■車いすの落とし物も

 遺失物センターと同じビルには、迷子になった子どもを預かるスペースもある。保護者が迎えに来るまで、言うことを聞かない子どもたちをあやすためのおもちゃも豊富に揃っている。

「昨年は車いすが乗り捨てられていた。それに松葉杖も2本。彼らはいったいどうやって家に帰ったんだろう」

 車いすはその後持ち主が名乗り出たが、松葉杖は引き取り手が現れなかった。「ビールを飲んで治ったのかね」とミューラー氏は冗談を言った。

 遺失物はオクトーバーフェストの16日間の期間中は現地で保管され、その後ミュンヘンの遺失物センターに移される。外国からの観光客の遺失物は、出身国の大使館や領事館に渡している。

■近所の犬も保護

 ミューラー氏は昨年、飼い主が気付くよりも先に、迷子の犬を発見した。

 オクトーバーフェストの会場近くの会社で働くビジネスマンの犬が、会場にふらりと入ってきたことがあった。犬は最終的にミューラー氏のもとに届けられ、ミューラー氏は首輪に書かれた番号に電話して、飼い主に知らせた。

「『ばか言うな、犬はテーブルの下にいる』と飼い主は主張した。それから犬がいないことに気付いたけれど」

 1時間後に、男性がばつの悪い顔をして犬を迎えに来たよ、とミューラー氏は含み笑いで語った。(c)AFP/Richard Carter