【7月4日 AFP】死んでもなお、香港の不動産価格高騰から逃れるすべはない。

 今、香港では墓地を手配しようとする遺族たちが、高額な費用と土地不足の影響に直面している。埋葬場所があまりにないため、人々は伝統的な中国の慣習を離れ、「海葬」を選び始めている。

「海なら、波に乗って好きなところに旅することができる。とても優雅です」と語るのはこの3年間、海葬を手掛けてきた香港当局の担当責任者、アレックス・チェンさん。「遺灰が海に散る。とてもロマンチックでしょう」

 慢性的な墓地不足を解消するため、当局が2007年に規制緩和を行って以来、海葬は人気を集めている。香港政府はさらに「環境に優しい」海葬のために、専用フェリーの無料運航を始めた。

 政府統計によると2007年から11年の間に海葬は4倍に増え、11年には年間650件の海葬が行われた。また、同期間中に専用フェリーは大型化され、定員は2倍の200人に増えた。利用者増加に応えて、1月以降はさらに大型のフェリーも導入されている。

 フェリーの上では、チェンさんら職員の介添えを得て、遺族が遺灰を生分解性の袋に詰める。この袋を木製の傾斜台から滑らせて海へ落とす。

■高額な墓地

 香港で私有墓地への埋葬にかかる平均費用は25万香港ドル(約260万円)。公営墓地を利用すればもっと安く、3190香港ドル(約3万3000円)ほどで6年リースの墓地を使用できるが、6年後には墓を掘り起こし、火葬するか別の埋葬場所を探さなければならない。

 中国では火葬などせずにそのまま遺体を埋葬するという慣習が根強く、「最初の頃は受け入れられていなかった」が、ここへ来て海葬が認知されるようになってきたとチェンさんは語る。「最初は小型ボート1隻から始めた。でも今は、ますます多くの人々が海葬を受け入れるようになった。私は毎月80~100家族の海葬をお世話しています」

 香港政府は2012~16年の間に新たな墓地12万人分を供給することを約束している。だが、香港市内の年間死亡者数は4万1400人で、墓地不足は緩和しそうにない。(c)AFP/Beh Lih Yi