【3月30日 AFP】酒を片手にすると普段よりもセクシーで賢くユーモアあふれる人間になった気分になる、という通説を、フランスの研究チームが実験で証明した。英医学専門誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイコロジー(British Journal of Psychology)」に近く発表される。

 地元の居酒屋と研究室でこの風変わりな研究を行ったのは、仏南東部グルノーブル(Grenoble)にあるピエール・メンデス・フランス大学(Pierre-Mendes France University)の心理学者ローラン・ベグ(Laurent Begue)氏率いるチーム。まず、酒好きの男女19人(うち3分の2は男性)に、自分の魅力を7段階で自己評価してもらった後、アルコール検知器で酒気レベルを測定した。すると予想通り、アルコール検知レベルが高いほど自身の魅力に対する自己評価も高かった。

 次に、フルーツカクテルの新製品を試飲してほしいとの触れ込みで、男性94人を集めた。被験者らには、カクテルにはアルコール入りとノンアルコールとがあり、どちらを飲んでもらうかは分からないと告げた上で試飲してもらった。その後、カクテルの宣伝に使われるとの想定で、試飲の感想をビデオカメラで撮影。その動画を本人に見てもらい、自身の魅力、快活さ、個性、ユーモアのセンスなどを自己評価してもらった。また、各人の酒気レベルを、ゼロから飲酒運転の法定制限値の2倍までの範囲で測定した。

 結果は興味深いものだった。

 アルコール入りカクテルを飲んだと思った男性たちは、実際に摂取したアルコールの濃度に関係なく、たとえノンアルコールを飲んでいた場合でも、自己評価が高かった。これに対し、ノンアルコールのカクテルを飲んだと考える男性たちは、実はかなり高濃度のアルコールを飲んでいた状態でも、自己評価が低かった。

「『酔っている』と思うだけで自分は魅力的になったと感じることが、この実験で明らかになった」とベグ氏はAFPの取材に語った。「アルコールそのものには、何の影響力もないのだが」

 研究チームは、「酔った」という気持ちにプラシーボ(偽薬)効果があるのではと見ている。一般に、ほろ酔い加減の人は魅力的だと信じられている文化的現象があるからだ。「酒は社会の潤滑油だという概念がある。他人に心を開きやすくするのではないか」(ベグ氏)

 ただ、自分ではセクシーな魅力にあふれていると自信を持ったところで、他人がそう見ているとは限らないので要注意だ。回りの人たちは、あなたを単なる酔っ払いと見ているだけかもしれない。

 ベグ氏らの研究では後日、実験とは無関係の人々に撮影した動画を見てもらった。多くは、アルコール入りカクテルを飲んだと信じて雄弁になっている男性たちを「魅力的でない」と判断している。(c)AFP/Daniel Silva