【3月26日 AFP】米ニューヨーク(New York)で24日、毎年恒例の「全米記憶力選手権(USA Memory Championship)」が開催され、フロリダ(Florida)州出身の登山家、ネルソン・デリス(Nelson Dellis)さん(27)が昨年に続き2年連続で優勝した。デリスさんにとってこの日は、文字通り「記憶に残る日」となったことだろう。

 参加者は14~59歳の人々で、職業も無職からコンピューターのプログラマー、看護士、テレビ司会者とさまざま。顔写真と氏名99人分、50行の詩、シャッフルされたカードの順番などの記憶に挑戦した。会場には400人以上の観客も詰め掛けた。

 優勝したデリスさんは、ランダムな数字の並びを記憶する競技で、303桁の数字を5分間で覚えることに成功。自ら打ち立てた記録を更新した。
 
 休憩時間には特別ゲストとして、過去大会の優勝者で「International Man of Memory(世界の記憶力男)」の異名を持つチェスター・サントス(Chester Santos)氏が登場。米下院議員435人の中から観客が名前を告げた議員の出身州、出身地区、所属政党、所属委員会を次々と答え、聴衆を感嘆させた。

 挑戦前には「かなり難しい。数千個もの、ばらばらなデータの集まりだからね。成功したら拍手を」と観衆に呼び掛けたサントス氏だが、1度の失敗を除いて全て正答した。

■スキルと正しい食事で記憶力アップ

 今年で第15回を迎える同選手権を創設した米IBM元幹部のトニー・ドッティーノ(Tony Dottino)氏は、身体の他の部位と同じように脳も鍛えれば向上すると示すことが選手権の目標だと語る。「(脳が)運動することで脳は実際に大きくなる。脳細胞は生涯を通じて成長するのだ」

 この競技は誰もが参加者になれると、ドッティーノ氏は主張する。「妄信の最たるものは、卓越した記憶力は天性のものというものだ。(記憶力は)誰でも訓練可能なスキルなのだ」

 記憶のプロは、異なった情報をいくつかの塊に分けてグループ化する「チャンク」手法などのテクニックを駆使している。基本的な例は、独立した数字をペアにして覚える数字の件数を減らすという方法。たとえば、「2」「0」「1」「2」は「20」と「12」の2つの塊に分けて記憶する。

 さらに、ドッティーノ氏によれば、脳に栄養を供給するためにオメガ3脂肪酸、特にDHAの摂取も大事だ。DHAはサケやサバなどの魚類や、大会のスポンサー「life'sDHA」社が販売する栄養補助食品に含まれているという。あわせてドッティーノ氏は「大量の炭水化物やデンプン、精糖を避けることが賢明だ」と呼び掛けた。

■情報氾濫の時代こそ「記憶力」

 大企業を対象に記憶力トレーニング法を指導するジム・キウィク(Jim Kwik)氏は、目まいを覚えるほどの情報に溢れる現代こそ「思い起こすこと」が、かつてなく重要になっていると指摘する。

 そんなキウィク氏は、巧妙精巧ななスマートフォン(多機能携帯電話)やカーナビなどの機器が、どこにいても当たり前のように氾濫する現状を嘆く。「自分自身の脳と記憶を、『テクノロジー』に外部委託しているようなもの。携帯機器は、あなたをどんどん愚かにしている」

(c)AFP/Sebastian Smith

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