【10月5日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)のとある料理教室。生地をこねたりレモンをしぼったり、せわしなく動き回る子どもたちの喧噪のなかで、ルカ君は卵を割り、殻を使って黄身と白身を器用に分けている。

 これが弱冠3歳による手さばきかと、一瞬目を疑う。ルカ君は子どもたちにお菓子やおいしい料理の作り方を教えるクッキングスタジオ「リトルスプーンズ(Little Spoons)」の土曜朝クラスの常連だ。

「ルカは料理が大好きなの」と、母親のマデリンさんは話した。「料理に興味があるようだからここに連れてくることにしたのよ」

 マデリンさんにとって、リトルスプーンズは料理を作って食べるだけの場ではない。混ぜたり転がしたり形を作ったりといった動きを通じて運動能力を磨くことができ、測定や数量や衛生について学ぶこともできる。他の子どもたちと一緒に作ることで社会性も身につけられる。「ここは一生役立つライフスキルを会得する場です」とマデリンさん。

■大人顔負けのメニュー

 リトルスプーンズの生みの親は、2人の子を持つリサ・キャンベル(Lisa Campbell)さんだ。料理への情熱と「家庭に優しい」時間帯で働きたいという2つを両立させるべく、2009年にIT企業を退職して起業した。もっとも多い年齢層は8歳から12歳だという。

 リトルスプーンズの理念は、子どもたちに楽しい環境の中でヘルシーな食習慣を学んでもらうことだ。

 ビーフのブルゴーニュ風パイ、アップルガレット、ムーンケーキ(月餅)など、家庭でも作れるような料理がメイン。幼児クラスでは鶏肉のカツレツや肉まんなどを作るが、もう少し年上になると、ベトナム風イカのシーフード詰めやカンガルー肉のたたきの串刺し、チョコガナッシュ、ラベンダークリームを添えたラズベリータルトなど、手の込んだ料理に挑戦することができる。

 なお、子どもの健康を考え、どの料理にも塩は使わず、バターや砂糖の量も大幅に減らしている。また、幼児クラスのテーブルの上には鋭い刃物は置かない。包丁の正しい使い方も教えるという。

 同様のクッキングスタジオを経営している男性は、小中学校のカリキュラムから家庭科の授業がどんどん減り、夕飯を作る余裕のない子持ちのワーキングマザーが増える中、子ども向けクッキングスタジオに商機を見たと話した。(c)AFP/Madeleine Coorey