【7月26日 AFP】アフガニスタンの首都カブール(Kabul)郊外の自動車ディーラーで、3台のセダン、1台のクレーン、1台のトラックが乗り捨てられたようにほこりをかぶっている。「もはや経済問題だよ」と販売店主のザマンさん。「何か月したって、あそこにある車の買い手は現れないよ」

「39」が入ったナンバープレートをつけている車は売春あっせん業者だ、というおかしな都市伝説が、アフガニスタンの自動車業界を悩ませている。この噂のせいで「39」を含むナンバープレートの車が売れないのだ。

 ここ数年で広まった噂の由来は、イラン国境に近いへラート(Herat)で、「39」のナンバープレートをつけた車を乗り回していた有名な売春業者の男だというが、真偽のほどは定かではない。真偽はどうあれ、いかがわしい男と性産業のイメージは、熱心なイスラム教国であるアフガニスタンの人びとに忌み嫌われるに十分で、ナンバープレート「39」はすっかり不道徳の象徴となってしまった。

 今年初めにトヨタ・カローラを1万2000ドル(約94万円)で買ったアフマドさんは今、それを半額の6000ドル(約47万円)で売ろうとしている。「ナンバー39の話を知らなかったんだ。でもすぐに近所の少年たちにやじられ始めた。仕事から帰る度に馬鹿にされるんじゃ、やってられないよ」

 戦火にさいなまれたこの国で、つつましくても営業していこうとしている自動車ディーラーには大打撃だ。「もちろんただの迷信だ。けれど実際に自分が売る車のナンバープレートが39にあたってしまったら、とんでもない損失だよ」とカブールのディーラー組合のメンバーは嘆く。

 おまけに本来、ナンバープレートを番号順に発行している交通委員会の元に残っているナンバーが、「39」ばかりという事態も起きている。新車を買って自分のプレートに「39」があたってしまえば、違法にペンキで番号を書き換える人も後を絶たない。

 交通当局は激高している。カブール交通局のハムダルド局長は、噂は「根も葉もない。読み書きのできない人々がこうした噂を信じるのだ。以前は毎日、大量のナンバーを発行していたが、今はこのでたらめな噂のおかげでずっと数が減っている」と述べた。
 
 問題はタクシー業界にも及んでいる。自分のナンバーに「39」が含まれているというタクシー運転手のサマドさんは、女性客を乗せている時の街の反応がたまらないと言う。「女性を乗せているとみんな、私が本当の売春業者だと思うみたいだ。その女性と組んでまるで商売しているみたいにね。この車はすぐにでも売るよ」(c)AFP/Mustafa Kazemi