【7月13日 AFP】チャールズ・ピリテリ(Charles Pillitteri)さんにとって、偽造ワインとの闘いは1998年に台湾で、自分の醸造所が作っているアイスワインの偽物を発見したときに始まった。

 カナダ・オンタリオ(Ontario)州ナイアガラ・オン・ザ・レイク(Niagara-on-the-Lake)にある醸造所、ピリテリ・エステーツ・ワイナリー(Pillitteri Estates Winery)を所有するピリテリさんは、自分のワインを偽造から守ろうと、22カラットの金箔を入れたり、透明インクを使ったりと、あらゆることを試した。だが、ワインを購入する時点で消費者を偽ワインから守る有効策は、なかなか見つからなかった。

 ピリテリさんがようやく見つけた対策は、コピー不可能な「泡模様の封印シール」をボトルに貼ることだった。仏ボルドー(Bordeaux)で開催された世界最大のワイン万博「ヴィネクスポ(Vinexpo)」でピリテリさんは、「正統性、トレーサビリティー(追跡管理)、完全性、消費者の満足感、そのすべてが得られる」と述べた。

■泡模様の封印、「プルーフタグ」

 このシールを開発したのは、ブランド保護サービスを専門とする仏企業プルーフタグ(Prooftag)だ。偽造ワインを撃退し、本物のワインであるという安心感を消費者に提供する技術の1つだ。

 プルーフタグと米アップル(Apple)の多機能携帯電話(スマートフォン)「iPhone」を使えば、消費者はアプリをダウンロードし、ほんの数秒でワインが本物かどうかを確認することができる。店の棚に並んでいるボトルでも可能だ。「簡単です。iPhoneで、ボトルにあるデータマトリックスコードの部分を撮影すると、ウェブサイトにジャンプします。そこには、そのボトルのシールの泡模様シールと同じ模様のシールの写真が載っています」(ピリテリさん)

 シールを破ると泡模様が崩れてしまうので、コピーすることが不可能なのだという。iPhone以外に、Androidやブラックベリー(BlackBerry)版のアプリも年内に公開される予定だ。

 このプルーフタグ、元は半導体製品の開発中にできあがった不良品だった。同社のクレマン・カイザー(Clement Kaiser)社長は、「粘着材のポリマーを塗った失敗の結果として、この泡が発生した」と語る。「電気特性が一貫せず、その問題を解決できなかったので、半導体のための研究は中止したのです」

 しかしプルーフタグ社は特許を得たこの泡を、偽造ワイン対策に活用することを考案した。現在では、この泡模様のシールは、カナダ、フランス、南アフリカ、米カリフォルニア(California)州のワイナリーに提供されている。

■ボルドーワインをデーターベースに、「スマートボルドー」

 ことしのヴィネクスポでボルドーワイン委員会は、偽造ワイン対策を発表した。「スマートボルドー」と呼ばれるアプリで、8200種類のボルドーワインのラベルをデーターベース化したものだ。十数種類の言語で提供されている。

「スマートボルドーでは、まず最初にボトルのラベルを提供することにした。これで消費者は、そのラベルが実際に存在するものかどうかを確かめることができる」と、ボルドーワイン委員会の広報担当者は語る。

 仮にビンテージワインのラベルによく似たラベルの偽造ワインがあったとして、例えば「Chateau Lafite」を「Chatreal Lafiteau」に変えたラベルが使われていても、違う言語圏の消費者は見分けるのが難しいだろうと、広報担当者は指摘する。だが、データーベースにアクセスすれば、それをチェックできる。

「スマートボルドー」アプリはすでに1万ダウンロードを記録した。特に中国語版と日本語版、韓国語版が多く、ダウンロード全体の4分の1に相当しているという。

■「スパイシール」、目に見えるけれど目に見えない

 商標保護を専門とする別の仏企業アドバンスド・トラックアンドトレース(Advanced Track and Trace)が開発した「スパイシール(SpySeal)」も偽造ワイン対策に有効だ。

 同社のプロジェクトマネージャーは「スパイシールは、目に見えるが目に見えない」と説明する。目に見えるシールの部分にはデーターマトリックスコードが記載されており、スマートフォンでスキャンすればウェブサイトにジャンプできる。一方で、改ざんや偽造対策として、目に見えない秘密の印も含まれているのだという。(c)AFP/Suzanne Mustacich