【7月7日 AFP】サッカー選手たちは石ころだらけのピッチを走り回り、ゴールキーパーは腹をすかせて迷い込んだヤギの群れを追い払うのに大忙し。9日に独立する南スーダン共和国の首都ジュバ(Juba)で前月末、サッカーとバスケットボールの「南スーダン」ナショナルチームが初めて公開練習を行った際の光景だ。

 20年余りに及ぶ北部との内戦で200万人以上の死者を出し国土も荒廃したスーダン南部は、今年1月に行われた住民投票で「南スーダン」としての独立が決まった。国としてのスポーツ公式記録はまだなく、ナショナルチームに新生国家の夢と希望が託されている。初の国際試合は独立翌日の10日に予定されており、サッカー代表はケニアと、バスケットボールの代表チームはウガンダと対戦することになっている。

 南スーダンサッカー協会(South Sudan Football AssociationSSFA)のルドルフ・アンドレア(Rudolf Andrea)会長は、「スタジアムに国歌が流れ国旗が掲揚される瞬間は、まさに歴史的なものとなる」と興奮気味に語った。また、「南スーダンサッカーの未来は明るい。2、3年後には、アフリカ・ネイションズカップ(アフリカ選手権、African Nations Cup)に出場しているだろう」と自信を示した。

■バスケットボールでは国際的スターを輩出

 トレーニング施設は不足しているうえ、サッカーやバスケットボールの競技場は初の国際試合に向けて改修中。さらに、生まれたてのナショナルチームには、まだ学ぶべきことが多くあるかもしれない。だが、選手やファンたちの熱狂は、それを補って余りあるものだ。
  
 大学のサッカーコートで行われた初の公開練習では、「South Sudan」の文字が入った赤いユニフォームを誇らしげに着たサッカー選手たちに、熱心な声援が送られた。選手の1人は「自分たちのチームができるなんて、これまで想像もできなかった。北のスーダンとスポーツで対戦する日を心待ちにしているよ」と語った。

 小学校の裏手の簡素なコートで行われたバスケットボールの公開練習でも、同じような雰囲気が漂っていた。選手の1人は指先でボールを回しながら次のように話した。「おじいちゃんもお父さんも兄弟も、内戦で命を落とした。だから、僕がこうしてコートの上で国を代表するなんて信じがたい気持ちだよ」

 これまで南スーダンは、国際的なバスケットボール選手を数多く輩出してきた。選手たちもその事実を認識している。おそらく最も有名なのは、今は亡き伝説的なNBA選手、マヌート・ボル(Manute Bol)だろう。身長が231センチもあったボルは、NBA史上で最も背の高い選手としても知られている。

 現在もシカゴ・ブルズ(Chicago Bulls)のルオル・デン(Luol Deng)などのスター選手が、NBAで活躍している。デンは幼少時代に戦禍の南スーダンを逃れ、英国で育った。かつて、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が好きなスポーツ選手としてデンの名前を挙げたこともある。

■民族集団の数は60以上、スポーツで一致団結を目指す

 南スーダンは現在、英国のサポートのもとで2012年ロンドン五輪の参加資格の取得に向けた手続きを進めている。

 南スーダンには60以上もの民族集団が存在するが、数十年におよんだ先の内戦で北部が一部の民兵集団を支援して民族対立をあおったこともあり、民族間には深い亀裂が残ったままだ。こうした状況のなかで、南スーダンの指導者たちはスポーツに国民が一致団結する呼び水としての期待をかけている。
 
 地元紙ジュパ・ポスト(Juba Post)のスポーツ記者、カヤンガ・ジョン(Kayanga John)氏も、「南部各地から寄せ集められた選手たちが共にプレーしているところを目にすれば、国という概念も生まれてくるだろう」と語った。(c)AFP/Peter Martell