【6月28日 AFP】赤ちゃんの時にビスフェノールA(BPA)にさらされたオスのネズミは、さらされなかったネズミに比べてメスのように振る舞うようになり、交尾相手として選ばれることも格段に少ないという研究結果が、27日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 BPAは缶詰やプラスチック容器などで一般的に使用される化学物質で、BPAが人間の成長や行動に影響を及ぼす可能性についても示唆する内容だという。

 米ミズーリ大(University of Missouri)の研究チームは、シカネズミを使った実験を行った。母ネズミの一方のグループには繁殖前の2週間と授乳期間中に、米政府が妊婦に対して定めた摂取許容量に比例する量のBPAを含む餌を与え、他方のグループにはBPAを含まない餌を与えた。

 母ネズミの子どもが離乳すると、子ネズミたちにはBPAを含まない餌を与え、成体になるまで行動を監視した。

■BPAに暴露されたオスは迷路で「あたふた」

 ネズミたちを迷路に置いてみると、子宮内でBPAに暴露されていないネズミは正しい出口に通じる近道をすぐに学習したのに対し、BPAに暴露されたオスのネズミでは、一見正常に見えるものの、迷路をうまく切り抜ける能力が低いことが分かった。手当たりしだいに突き進んだり同じ間違いを繰り返したりしていたのである。正しい通路を見つける能力は、交尾相手を探す時に役立つこともあり、オスの方にだけよく発達する。

 また、成体のメスが交尾相手として選んだオスは、1対2の割合で、BPAに暴露されているオスよりも暴露されていないオスの方が多かった。

 研究を率いたシェリル・ローゼンフェルド(Cheryl Rosenfeld)氏は、「認知・行動パターンが男女で先天的に異なる人間などの生物種についても、こうした結果は大きな意義を持っていると思われる」と述べた。なお、BPAが(ネズミ同様の)健康被害を人体に及ぼすかは不明だとしながらも、「その懸念があるのは明白だ」と断言した。

 BPAが及ぼす危険性について現時点では科学的なコンセンサスはないが、欧州連合(EU)とカナダは、ほ乳瓶にBPAを使用することを既に禁止している。(c)AFP