【5月6日 AFP】暗がりの中で、腕に赤ちゃんを抱いたり母乳を与えたりしながら、母親たちが映画を見ている――。ここは、ブラジル・サンパウロ(Sao Paulo)の映画館。同国では最近、赤ちゃん連れで映画を楽しむのが母親たちの間で新たな流行となっている。

「シネマテルナ(CineMaterna)」は2008年、乳幼児を持つ母親たちの文化活動参加を支援する目的で立ち上げられた、母親たちによる非営利活動だ。

「赤ちゃんを連れて外に出ようとすれば、ある程度の組織化が必要になる」と、創設者の1人で生後6か月の男の子の母親、イレーネ・ナガシマさん(40)は語る。子育て中の孤独感を克服するため、ブラジルの若い母親たちは映画を通じた社会活動を活発化させている。

「シネマテルナ」では映画配給チェーン各社の協力を得て、1歳半までの乳幼児連れで映画を鑑賞できる専用の上映室を、国内14都市で確保した。専用の上映室は、空調を控えめにし、常夜灯を設置。おむつ替え用の部屋も用意され、クッションやおもちゃがそこかしこに置かれている。映画を見終わった母親たちがコーヒーを飲みながら語り合い、交流を深めるきっかけとなることも期待している。

 これまでに「シネマテルナ」のウェブサイトから登録した母親は2万人近い。合わせて見たい映画を選んでもらったところ、「バイオレンスものやホラー以外」という結果に落ち着いた。 

「とても素敵な活動。赤ちゃんがいると、家に閉じこもりがちになってしまうけど、これなら外に出て他のお母さんたちと交流できる」と、参加者の1人、カリンさん(30)は喜んでいる。初参加の時には生後6か月だった息子のペドロくんも、すでに1歳2か月とあって、上映室内をあちこち動き回る。「ほとんど映画は見ていられないわ。でも、外に出るだけでもいいの」

 今日の上映映画は3Dのアニメ映画「リオ(Rio)」だ。保護者40人に、その半数の赤ちゃんたち。母親だけでなく、父親の姿もある。

 映画が始まるとすぐに、1人の赤ちゃんが泣き出した。母親が赤ちゃんに乳を与えて落ち着かせる横で、他の母親たちは静かに映画に見入っていた。(c)AFP/Anella Reta