【12月31日 AFP】もうすぐ母親になろうとしているスペインの妊婦たちの多くが、どうにか大みそかのうちに出産したいと必死になっている。2500ユーロ(約27万円)の出産手当が1月1日から廃止されるからだ。

 大みそかに生めば手当てをもらえるが、真夜中を過ぎれば何ももらえない。医師らは出産を早めようと無理な行為をしないよう忠告している。

 子どもが生まれるたびに各家庭に2500ユーロを支給するこの出産手当は、2007年7月に社会労働党率いる現政権が少子化対策として導入した。しかし、欧州の財政危機に経済が飲み込まれることを恐れる市場に押され、支出の大幅削減と財政赤字の一掃に今年取り組まざるをえなかったスペイン政府は、2010年12月31日をもって出産手当を廃止する決定を下した。

 インターネットのフォーラム上では、大みそかの駆け込み出産に関する話題が飛び交っている。中には「ラズベリーティーを飲むといい」「階段を上るといい」など、自然分娩で出産を早めるためのアドバイスもみかけられる。しかし医師らは、そうした行為は危ないと懸念している。

 南部セビリヤ(Seville)にある病院の助産師はエル・パイス(El Pais)紙に、医師をだまして早く生もうとする女性までいると語った。「1月上旬が予定日の妊婦たちの多くが、『出血している』とか『破水した』と言ってやって来ます。はっきりとは言わないけれど、出産する日を早めてほしがっているのです」

 現地紙ABCによると、これまでに出産手当ての恩恵を受けた女性は約150万人に上る。しかし出産奨励策として期待されたにもかかわらずスペインで2009年に生まれた赤ちゃんの数は前年より5%少ない49万2931人(国民1000人あたり10.73人)にとどまり、10年ぶりに減少に転じた。(c)AFP/Denholm Barnetson