【12月30日 AFP】東アジアの急速な経済発展は長年、世界の羨望(せんぼう)の的だったがひとつ、決定的に足りないものがある。「子ども」だ。

 米ハワイ(Hawai)州にあるシンクタンク、イーストウエストセンター(East-West Centre)がこのほど発表した調査報告書によると、過去半世紀の間に東アジアのすべての国で、経済と社会の近代化にともなう「教育、就業機会、生活水準、保健衛生の向上と家族計画の普及」により、出生率が低下している。

 その先頭を進むのが日本だ。現在の人口は1億2700万人で、その4人に1人が65歳以上であるのに対し、子どもはわずか1割強だ。人口は3年前から減少に転じており、国立社会保障・人口問題研究所は、2055年までに戦後、出生数が増加しだした1955年と同水準の9000万人まで減ると推計している。 

 日本における少子化の一要因として、管理職に就く女性はいまだ圧倒的に少ないものの、妊娠が「キャリアを葬り去ること」と同一視されていることが挙げられる。また、若者たちの多くが「会社人間」だった父親世代とは対照的に一時雇用で働いており、家庭を作るだけの経済的余裕がもてないことを指摘する専門家もいる。

 一方、経済同様、人口も大国の中国でも、30年間続いている「一人っ子政策」により少子化へのカウントダウンが始まろうとしている。
 
■少子化は経済成長に共通の現象

 出生率の低下は、経済が成長するにつれ各国で共通してみられる傾向だ。

 農村部の伝統社会では、子どもが農家を受け継ぎ、年老いた親たちを世話するが、近代化が進んだ都市部では、子どもをもうけることは経済的に大きな負担だとみなす夫婦が多い。また都市部のほうが避妊のための知識や道具も入手しやすい。

 人口を安定的に維持させるために必要な女性1人当たりの生涯出産数は約2.1人とされるが、欧州の多くの国がこの数字を下回っている。アジア各国の1人当たり生涯出産数は現在、中国が1.6人、シンガポールが1.2人、韓国が1.1人、台湾が1.03人となっている。

■国民の大半が「少子化は良くないこと」と答えるものの・・・

 人口減少への対策としては、移民の積極的受け入れが挙げられるが、東アジア諸国はいずれもこれには消極的だ。

 他方で各国政府は、税金優遇措置などの諸政策で少子化を克服しようと努力しているが、目立った成果は上がっていない。  

 アジアの各種世論調査では、少子化に危機感を募らせるものの、子作りへの意欲にはつながっていないという意識の全体像が浮かび上がる。

 台湾で前月子どものいない就業者に行われたアンケートでは、全体の87%が、少子化は深刻な問題だと回答した。その一方で、3人に2人が「子どもを作りたいとは思わない」と答えている。(c)AFP/Frank Zeller