【11月18日 AFP】全米の空港で導入が進む全身透視スキャナーを使った身体検査を拒否した男性と保安職員とのやりとりを記録した動画が、動画共有サイト・ユーチューブ(YouTube)に投稿され、スキャナー反対派の間でこの男性を英雄視する動きが広がっている。

 この男性は前週末、米カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)の空港で全身透視スキャナーによる検査を拒否したジョン・タイナー(John Tyner)さん(31)。スキャナー検査を拒否した乗客に対しては保安職員が身体検査をする決まりになっているが、タイナーさんはこれも拒否した。

 動画には、手を触れようとした係官に対し、タイナーさんが「俺のジャンクに触るんじゃねえ。おまえを逮捕させるぞ」とすごむ声が録音されていた。ジャンクとは「くず」「廃品」の意味だが、ここではもちろんタイナーさんの脚の付け根付近にある身体の一部分を指している。

■年末年始が試金石

 米国ではこれまでに65空港で全身透視スキャナーが導入されている。16日に米CBSニュースが発表した世論調査では米国人の約8割が全身スキャナーに賛成と回答するなど、多くの米国人は空の便のセキュリティ強化を支持しているが、身体検査で権利が侵害されると感じる人も増えている。

 こうした中、感謝祭から新年にかけての休暇シーズンは、全身透視スキャナーによる検査体勢にとって試金石となるとみられている。インターネット上では、感謝祭の前日の11月24日に空港でわざと全身透視スキャナーを拒否し、係官による身体検査を要求して新しい検査体勢に抗議しようという動きも出ている。

 またパイロットの間でも、繰り返しX線を浴びさせられることで、健康上の問題が生じるのではないかと懸念する声も上がっている。

■スキャン画像の流出懸念も

 米運輸保安局(Transportation Security AdministrationTSA)は、全身透視スキャナーで撮影された画像が一般の目に触れることはないとしているが、反対派は納得していない。

 米IT系ブログのギズモード(Gizmodo)は16日、フロリダ(Florida)州の裁判所で全身透視スキャナーを使って撮影されたとされる大量の画像を掲載し、空港のスキャナーについても「いずれ同様の画像が流出するのはほぼ確実」だと指摘した。

 米ニュースサイトのハフィントン・ポスト(Huffington Post)のコラムニスト、ジェイ・マイケルソン(Jay Michaelson)氏は、「クリスマスに飛行機でおばあちゃんの家に行くたびに性器の鮮明な写真を撮られる。拒否すれば、赤の他人に性器を触られる、そんな時代になってしまった」との記事を寄せ、「警察国家の行きすぎた拡大を許すな」との論陣を張っている。(c)AFP/Sebastian Smith


【関連記事】空港の全身透視スキャナー、人体への危険を科学者らが警告

【参考】全身透視スキャナーを使った身体検査を拒否したジョン・タイナーさんの動画を紹介するニュース番組(英語)