【11月14日 AFP】米国の空港でセキュリティチェックのために使用されているX線を用いた全身透視スキャナーについて、米国の科学者たちが人体に危険を与える可能性があると警告している。

 米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)医学部生物物理学科でX線研究室を率いているマイケル・ラブ(Michael Love)博士は12日、AFPの取材に対し、「リスクは最小限だが、統計的にはこのX線によって皮膚がんを発症する人が出ることはありうる」と述べた。

 搭乗客や搭乗員に対して使用されているこの検査装置は、衣類の下の体の細部まで透視できる全身スキャナーで、米運輸保安局(Transportation Security AdministrationTSA)が2007年に全米の空港に導入を開始した。現在、全米の65の空港で計315台が稼動しているが、景気刺激策の一環として得られた予算により、さらに450台を追加導入することになっている。

 しかし、これまでにプライバシーの侵害だという議論がされてきたことに加え、今回のように健康に対する懸念の声もあがっていた。

 4月には米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の科学者たちが「深刻な健康リスクの可能性」について、ホワイトハウス科学技術局(Office of Science and Technology)に書簡を送っていた。この中で同大の生化学者ジョン・セダト(John Sedat)氏らは、スキャナーのX線は皮膚を透過し、下層組織にまで至ると指摘し、「照射量は安全基準内であっても、全身にくまなく浴びることを考えれば、皮膚にとって危険な量に達するおそれもある」と警告していた。

 同局は先週、この書簡に対し、スキャナーは「米政府各機関で徹底的に実験し、安全基準を満たしていることが確認されている」と回答したが、書簡を送ったセダト氏は「X線の強度など機密指定されているシステムの詳細については依然、分からない」と述べている。(c)AFP/Karin Zeitvogel