【10月12日 AFP】オリーブ色の肌の少年がブロックで作ったツインタワーにおもちゃの航空機を突撃させ、別の少年が消防隊員役を演じている――そんな写真が、メディアの情報が洪水のように押し寄せる現代における子どもの育て方について議論を巻き起こしている。

 この写真は、写真家のジョナサン・ホビン(Jonathan Hobin)氏の写真展「遊戯室にて(In the Playroom)」で公開されたもの。2001年9月11日の同時多発テロを題材に遊ぶ子どもたちや、イラクの旧アブグレイブ(Abu Ghraib)刑務所における被拘束者らへの虐待を題材にして遊ぶ子どもたちを撮影した写真など計12点が、カナダの首都オタワ(Ottawa)のデール・スミス・ギャラリー(Dale Smith Gallery)で10日まで公開された。

 米コロラド(Colorado)州で美少女コンテストの常連だったジョンベネ・ラムジー(JonBenet Ramsey)ちゃんが殺害され、自宅の地下室から発見された事件を題材に遊ぶ子どもたちの写真もある。

 この展示会をめぐっては、政治的主張に子どもを利用しているとの批判がある一方、人生における恐ろしい出来事を子どもに話して聞かせる際の新たな方法の可能性を示すものだと評価する声もあり、賛否両論の論争になっている。

 ホビン氏はAFPの取材に、「子どもたちは昔から自分たちが見た物事を遊びに取り入れてきた。遊びは、子どもたちが身の回りの世界を理解していくための手段だ」と述べ、「わたしのしたことは、子どもたちが見た世界を誇張して表現しただけ」と語った。

■「子どもを利用するのは無責任」との批判も

 展示に批判的な人びとは、ホビン氏のことを変質者で人種差別主義者、9.11同時多発テロの犠牲者の遺族に無神経で、さらにはニューヨーク(New York)のツインタワーの崩壊を描いたことから双子(ツイン)嫌いだと非難している。

 しかし、最も批判が集中したのは、写真のモデルとなった子どもたちの親たちに対してだった。旧アブグレイブ刑務所での拷問シーンを再現した作品「ア・ブー・グレイブ(A Boo Grave)」のような写真の撮影に子どもたちを参加させたことが批判されている。写真に登場した子どもたちは子役モデルや、ホビン氏の親戚や友人の子どもたちだという。

「ア・ブー・グレイブ」では、下着のパンツ姿で手錠をかけられた少年がぬいぐるみのイヌに襲われ、迷彩ズボンにカーキ色のシャツを着た少女が、電極につながったワイヤーを指につけて台の上に立つ覆面を被せられた少年を指さしている。

 人気育児ブログ、バッドママクラブ(Bad Moms Club)は、「あなたに十代の子どもがいて、アートで『自己表現』したいと言うかもしれない。しかし、血塗られた場面や墓場やツインタワーから飛び降りる人をテーマにした写真撮影に、自分の(おしめをつけているような)幼い子どもたちを出すことは間違っている」と批判した。

「どのような政治的意見を(ほかの誰かの代理として)表明しているのかなんて、あの幼い子たちが自分で理解しているはずがない。こんなことは明らかに間違っている。これはアートかもしれないけれど、アートのために子どもたちの無邪気さを脅かすなんて無責任だ」(バッドママクラブ)

■「子供が無邪気で気楽とは限らない」、ホビン氏

 一方、アルバ(オランダ自治領)で行方不明になった10代の米国人女性、ナタリー・ホロウェー(Natalee Holloway)さんの未解決事件を題材にした写真撮影に5歳と7歳の息子を参加させたアマンダ・エサリントン(Amanda Etherington)さんは、地元メディアに対し、芸術的な価値があると考えたから子どもたちを参加させたと語った。

 また、別の親は「(息子は)棒付きキャンディーを何個かもらって楽しい時間を過ごした」と日刊紙トロント・スター(Toronto Star)に語った。

 ホビン氏は、子ども時代を「無邪気で気楽」な日々と考える人は多いが、「人生の暗い面に気づくような経験をして、すべての物事が順調に行くわけではないということを知り」、死や病気、不安、その他の恐ろしい現実と向き合っている子どももたくさんいると語った。(c)AFP/Michel Comte