【7月28日 AFP】中国南部や香港(Hong Kong)などの広東語が話されている地域で、普通話(Putonghua、標準中国語)の使用拡大に抗議する動きが広がっている。

 きっかけは中国南部広東(Guangdong)省広州(Guangzhou)市の人民政治協商会議(People's Political Consultative Conference)が今月初め、11月に広州で開かれるアジア競技大会(Asian Games)を前に地元テレビ局のプライムタイムの番組を広東語から普通話に切り替えるよう市当局に提案したことだった。

■香港で抗議行動を計画

 広州市では25日、この方針に反発した人びと大規模な抗議行動を行った。香港でも8月1日に同様の行動が計画されており、活動家らがソーシャルネットワーキングサービス(SNS)フェースブック(Facebook)を通じて参加を呼びかけている。主催者は10万人の参加を目指している。27日午後までに150人以上から参加の意志を示す書き込みがあったという。1989年の天安門(Tiananmen)事件後の中国で、本土で起きた抗議行動が香港に広がるのは珍しい。

 地元夕刊紙、羊城晩報(Yangcheng Evening News)によると、地元テレビ局の広州電視台(Guangzhou TV)は一連の抗議を受け、放送で広東語と普通話を併用する現在の方針を変えないと発表した。それでも、広東語話者たちの懸念は消えない。

 香港で抗議行動を計画している蔡淑芳(Choi Suk-fong)さんは、政府による普通話促進の動きは国内少数派の抑圧だと考えている。「英国統治下の香港で二流言語と見られることが多かった広東語は、残念なことに今度は中国政府から抑圧されようとしているんです」

■チベットやウイグルでも普通話の押しつけに反感

 広東語は広東省、香港、マカオ(Macau)に加え、海外の華僑社会でも広く話されている。中国では広東語のほかにも多くの方言や少数言語が存在するが、これらの言語間の違いは互いに理解できないほど大きい。中華人民共和国が成立した1949年以後、国の一体化を進める共産党政府は、北京(Beijing)の方言を基とする普通話の普及に力を注いできた。

 1982年に普通話が正式に公用語に定められると、多くの放送局が普通話を放送に取り入れるようになった。近年、内陸部から沿海部への出稼ぎ労働者が増えるにつれて普通話も広がっていった。
 
 しかし広東省、チベット(Tibet)自治区、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)、内蒙古(Inner Mongolia)自治区など独自の言語文化を持つ地域では普通話を押し付けられているとして反感を抱く住民も少なくない。(c)AFP/Polly Hui