【7月23日 AFP】フランス・ボルドー(Bordeaux)地方の試練の時代が終わろうとしている。同地方のワイン製造業者の最高権威機関、ボルドーワイン委員会(Bordeaux Interprofessional Wine CouncilCIVB)が、低価格ワインの製造を大幅に削減するという決定を、今週下したためだ。

 CIVBは、ワイン全体の生産量を12%増やす一方で、低価格版、いわゆる「ベーシック(Basic)」の生産量を現在の110万ヘクトリットルから削減していく内容の新戦略を発表した。具体的には、3分の1を高級ブランド種に置き換え、3分の1をロゼなど別の種類に置き換え、残りの3分の1を破棄する。

 ベーシックは、フランスでは1本2ユーロ(約220円)以下で売られているが、生産者や小売業者の間では、有名ワインの産地というボルドーのイメージが損なわれることへの心配があった。

「再征服」と名付けられたこの新戦略では、ターゲット市場もこれまでの60か国から30か国へ半減された。最優先にされるのは中国、米国、英国、日本、ドイツ、ベルギー、フランスの7か国だ。

目標では、収益を現在の35億ユーロ(約3900億円)から5~8年以内に10億ユーロ(約1100億円)積み増す。

■「誰ももうからない」これまでのワイン産業

 生産者組合の幹部らは、ボルドーブランドのイメージが「損なわれ」、ワイン取引・生産業者の数が減少している上に、先の経済危機がブドウの品質の向上と競争力の維持に必要な投資を鈍らせたことが各種調査で明らかになっている、と指摘する。

 さらに、ワインの取引業者は、2003~07年のワイン市場の成長期にさえ、ボルドーワインの潜在能力に関する目測を誤った。この期間、2億9300万ユーロ(約320億円)もの収益をみすみす見逃したと考えられている。

 問題は品質だけではない。ボルドーワイン市場では、一部のワインの価格変動が残りの銘柄の価格も不安定にさせていると、関係者は指摘する。

 去年の冬、赤ワイン1樽(900リットル)の値段は980ユーロ(約11万円)だったが、その後650ユーロ(約7万3000円)に下がり、今月に入ると850ユーロ(約9万5000円)になった。
 
 生産者組合のベルナール・ファルジェ(Bernard Farges)会長は、「ボルドーワインの市場では、誰も金を稼げない。持続可能ではないし、誰も生き残れない」と嘆く。だからこそ、高級ワインへの移行が生き残りの道なのだという。 

■4つの分類に統一

 新戦略では、ワインを価格帯で上から「アート(Art)」、「エクスプロレーション(Exploration)」、「ファン(Fun)」、そして「ベーシック」の4つに分類し、生産量を「アート」で34%、「エクスプロレーション」で57%、「ファン」で11%増やし、全体の収益を30%アップさせる。 

 また、名称や等級がわかりにくいとの不満が多く寄せられていたラベルについても、表記を簡素化してわかりやすくする。(c)AFP/Suzanne Mustacich