【4月28日 AFP】オーストラリア人の10歳の少女が猛毒クラゲに刺されたものの、一命をとりとめ、6週間後に回復した。公共テレビ、オーストラリア放送協会(ABC)が27日報じた。専門家は、医学の歴史を塗り替えるかもしれない事例だと驚きの声を上げている。

 レイチェル・シャードロウ(Rachael Shardlow)ちゃんは、前年12月、東部クイーンズランド(Queensland)州グラッドストン(Gladstone)近郊のカライオピー川(Calliope River)で兄と遊んでいる最中、猛毒クラゲに刺され、「目が見えない。息ができない」と訴えながら意識を失った。兄がすぐに川から引き揚げたが、その両足にはクラゲの触手が巻き付いていた。

 その後病院に搬送され、6週間後には退院の運びとなった。

 ジェームズクック大(James Cook University)のジェイミー・セイモア(Jamie Seymour)教授は、「刺し傷の写真を見たとき、正直、『この子が生き延びられたはずはない』と思った」と、当時を振り返る。 

 猛毒クラゲは、長いつる状の触手を持つ。その毒は心臓や神経系を直撃するとともに筋肉の激痛、おう吐、血圧の急激な上昇をもたらすため、刺されるとその場でショック死するか、心臓発作を起こして死亡する場合が多い。なお、有効な抗毒素は現時点では開発されていない。

 セイモア教授は、「このような猛毒にやられながらも生き延びた人物については、これまでのどの文献にも記載がない」と語り、この少女の回復の状況を調べることで極めて有益な情報を得られるとの期待を示した。

 少女の父親によると、少女には、足の刺し傷のほかに、「自転車に乗って登校したあとで、自転車に乗ってきたことを忘れる」といったような短期的な記憶障害が見られるが、認知・記憶能力に関する検査で問題は見つかっていないという。(c)AFP