【4月8日 AFP】保守的な国エジプトでは、男女産み分け法を「医学の進歩」と見る人がいる一方で、伝統を重んじる人々は非道徳的だとして、このサービスを提供するクリニックをやり玉に挙げている。
 
 同国では、社会からの非難をものともせずに男女産み分け法を提供するクリニックが約50ある。そのうちの1つ、カイロ(Cairo)にあるクリニックでは、アシュラフ・サブリー(Ashraf Sabry)医師が、息子を熱望する親たちに対し、体外受精技術を用いた産み分けを行っている。

「親たちの多くには既に女の子がいて、男の子を欲しがっている。家名を継がせるためにどうしても男の子が欲しい、という親もいる」(サブリー医師)

 貧困者の割合が人口の40%以上(世界銀行(World Bank)の統計による)という同国では、4000~5000ドル(約37万~47万円)もの費用がかかる産み分けは、大半の国民にとって高嶺の花だ。

 産み分けは人口動態を変えるという議論についても、医師たちは否定する。カイロのある婦人科医は、「男女のバランスを崩そうというのではない。産み分けが成功するか否かは、あくまでも、神様がお決めになること」と話した。

 産み分けについてはイスラム教聖職者の間でも意見が分かれている。匿名希望のある上位聖職者は、胎児の性を決めるのは神なのだから産み分けは許されない、と反論した。

 一部の国会議員たちは最近、体外受精の規制ならびに便宜的な男女産み分けの禁止を骨子とした法案を議会に提出した。法案については、男女産み分けに反対している事実上の最大野党、ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)も賛同している。

 与党国民民主党(National Democratic Party)のある議員は、「自然妊娠が可能な親たちが、男の子を授かれるという理由だけで体外受精という最終手段に訴えるのは、憂慮すべき事態だ」と話した。

■「女児しかいないよりは、子どもが1人もいない方がまし」

 選択的な体外受精は、一部の西洋・アジア諸国では禁止あるいは厳格に規制されている。前述のサブリー医師が働いているクリニックなどは、「法の抜け穴」を利用して、産み分けを提供している。 

 現在の男女産み分けの実施数については、公式のデータはないものの、年間十数例と推定される。選択的中絶や女児殺害が人口の男女比に大きな影響を与えているインドや中国の比ではないが、男児が好まれる習慣はエジプト社会にも深く根付いている。

 07年にエジプト人男性に対して行われた調査では、「男児の方が好ましい」と答えたのは全体の90%、「女児ばかりよりは、子どもが1人もいない方がまし」という回答もみられた。「女児しか産まない」との理由で離婚したという男性も1万人程度にのぼった。(c)AFP/Fatma Ahmed