【3月31日 AFP】タイ東北部のウドンタニ(Udon Thani)。通称「欧米人通り」にあるバーでビールを飲んでいたオーストラリア人男性、ジャスティン・レインズ(Justin Raines)さんは、「太っていようが、顔立ちが悪かろうが、ここでは関係ない。優しく世話をしてくれる女性に必ず出会えるんだ」。レインズさんの隣で、タイ人で妊娠中の婚約者イブさんも微笑む。イブさんは、まだ21歳という若さだ。レインズさんの年齢の半分にも満たない。

 オーストラリアのクイーンズランド(Queensland)から9年前にタイにやってきたレインズさんは、バンコク(Bangkok)で出会ったタイ人女性と1度目の結婚をした。その女性とは離婚してしまったが、すでにウドンタニで欧米人向けのバーを営んでいたレインズさんは、すっかりこの街のゆったりとした生活になじんでしまっていた。そこで出会ったのがイブさんだ。

   「ウドンタニの女性はタイで一番美しい。それに、バンコクやプーケット(Phuket)などより物価が安いから経済的でもあるんだ」(レインズさん)

 タイ東北部は産業といえるのは農業くらいで、タイでも最も貧しい地域だ。プーケットやパタヤ(Pattaya)などの人気観光地にあるような高級ホテルやビーチリゾートなどは望むべくもない。

 それでもレインズさんのように、この地にひかれてやって来る外国人は少なくない。レインズさんとイブさんのような外国人男性とタイ人女性のカップルは6万~7万組に上るとみられる。

 こうしたカップルの先駆けはベトナム戦争中の1960年代、タイ国内の米軍基地に送られた米兵とタイ人女性たちだ。その後もこうしたカップルの数は増え続けた。タイ東北部出身の女性の間でこうした結婚が目立つのは、貧しい家族を支えるために、故郷を離れてバンコクのバーなどに出稼ぎに出る女性が多いからだ。

 イブさんも、欧米男性との暮らしは、皿洗いなど家事を手伝ってくれるから「楽しい」と語る。問題なのは、夫と外国人の友人らとの交遊だ。「もう独身じゃないのに、飲みに出かけると朝まで帰ってこないの。わたしは、それが我慢できない。それで、しょっちゅうけんかになる」

 元弁護士で現在は著作のためにバンコクのバーで働く東北部出身のタイ女性を取材している英国人ジョン・バーデット(John Burdett)氏によると、一般的に年齢差が大きい、不動産は妻名義で購入せざるを得ない場合が多いなどの難点はあるものの、多くの場合、このような結婚はタイ女性とその家族に経済的な安定をもたらし「大成功」するという。

 重要なのは両者(特にこの場合は欧米人男性)が、互いの文化や習慣の違いを理解しあうことだと、バーデットさんは説く。

 これを実践しているのが、レインズさん同様にオーストラリア出身でタイ人女性と結婚したロニー・ベーンキ(Ronnie Behnke)さん(37)だ。ベーンキさんは、東北部コンケン(Khon Kaen)県の小村で26歳の妻パーノムさんとともに養魚場を経営している。

 ベーンキさんは7年前、南東部のリゾート地パタヤでメードとして働いていたパーノムさんと出会い、恋に落ちた。だがパーノムさんに連れられて初めてこの村を訪れたときは、かなりの衝撃を受けたという。「妻の家族のためにトイレとシャワーを修理したけど、それでも使う気にはなれなかった」

 だが、貧しいながらも与えることを惜しまない村の人びとと接するうちに、次第に彼らを援助したいと強く感じるようになったという。ベーンキさんは養魚場が村の経済の助けになることを願っている。同時にボランティアとして、村を訪れる外国人にタイの農村地域における生活のアドバイスなども提供している。

   「収入を得る仕事もあるし、周りには信頼できる人たちがいる。ここでは安心して暮らせるんだ」(ベーンキさん)

 ベーンキさんのタイ語は流暢ではないが、地元の欧米人と接するよりも、タイ人と過ごすほうが楽しいという。一日中、バーで飲んだくれることしか知らない欧米人男性に対して、ベーンキさんは「ここには飛行場もある。嫌なら帰ったらどうだ?と言ってやりたくなる」という。

 パーノムさんもベーンキさんとの結婚生活に満足しているようだ。「素晴らしい男性にめぐりあえたと思う。彼は優しいし、それで十分幸せ。簡単なことよ」

(c)AFP/Rachel O'Brien