【2月23日 AFP】冬季五輪の華といえば、やはりフィギュアスケートだ。しかし、ほとんどの男性は、実はフィギュアスケートが好きだとは断じて認めようとしない。

「だって、『おい、一杯やりながらフィギュアスケートでも見ようぜ』なんて言えないよ」と、2010年の冬季五輪開催地、カナダ・バンクーバー(Vancouver)に住む大工アンドレ・サンダーさん(46)は言う。サンダーさんはフィギュアスケート競技会場のパシフィック・コロシアム(Pacific Coliseum)に妻のデナさんとアイスダンスを見に来た。だが、フィギュアスケートは「女っぽい」と見なされると考えている。

 確かに、フィギュアスケートのファン層は明らかに女性に偏っている。その理由について、華やかな衣装と女性的な演技が持ち味の男子シングルの米国人選手ジョニー・ウェア(Johnny Weir)に代表されるように、男性が持つ女性的な側面が強調されるのを恐れているためと分析する専門家もいる。

 トロント大学(University of Toronto)のヘレン・レンスキー(Helen Lenskyj)名誉教授は「華やかで胸をはだけた衣装や、化粧、華美なヘアスタイル、毛皮や飾り・・・男性はそういったものに不安を抱くのです。異性を愛する男性の特質が脅かされると感じるからです」と、地元紙グローブ・アンド・メール(Globe and Mail)の記事で説明している。

 一方、男たちは、ただ単にフィギュアスケートが好きだと認めたくないだけだとの見方もある。

 オンタリオ(Ontario)州キングストン(Kingston)のクイーンズ大学(Queen's University)でフィギュアスケート史を研究するメアリー・ルイーズ・アダムス(Mary Louise Adams)准教授は、観客の性別が圧倒的に女性に偏っていることを理由にあげる。「家でフィギュアスケートを見ている男性は多いはず。でも、彼らは職場など家の外ではフィギュアの話はしないのです」

 サンダーさんも、男性の隠れフィギュアスケートファンは多いとみている。

「こないだパブに行ったら、テレビが何台かあって色んなスポーツを流していた。けど、パブにいた男は皆、フィギュアの男子シングル中継にくぎ付けになっていたよ。『四回転を決めたぞ!』と叫んでたやつもいたな」

 その一方で、サンダーさんは判定をめぐるごたごたが男性をうんざりさせているとも指摘した。「いつだって、判定をめぐってもめるんだ。もっとドライにわかりやすくやるべきで、判定に主観が入るのもいただけない。それに、ちょっと競技時間が長すぎるな。トップスケーターたちは最後まで登場しないし」

 フィギュアスケートを見るためにパシフィック・コロシアムを埋めた1万1000人の観客のなかで、男性客のほとんどは夫婦連れだった。そうした男性の1人ヒュー・アンドルーズ(Hugh Andrews)さん(56)は「アイスホッケーのカナダ対アメリカの試合があるって知ってたら来なかったよ」と苦笑い。「ここではわたしは明らかに少数派だね。観客の3分の2が女性なんだから」。アンドルーズさんは最後に「フィギュアスケートを見るのは楽しいよ。女の子向けであることは確かだけど」と付け加えた。(c)AFP