【1月31日 AFP】手軽にあらゆる情報が得られるモバイル時代の子どもは読解力が弱くなるのではないか――米インターネット検索大手グーグル(Google)の最高経営責任者(CEO)、エリック・シュミット(Eric Schmidt)氏(54)は29日、スイス・ダボス(Davos)で開かれた世界経済フォーラム(World Economic Forum)年次総会(ダボス会議)で、このような懸念を表明した。

「今や即座に情報が得られるモバイル機器に全世界の関心が集まっているが、こうした機器を使うことで本や雑誌などを読む時間がますます減ってきている。こうした傾向は、物事を認識する力や『深く読む力』に影響を与えるだろう」とシュミット氏は指摘する。

 ただし長時間のゲームはそれほど問題ではないと考えているという。「ゲームで長時間遊ぶ十代の子どもは、実は論理的思考力や、目と手を協調して使う能力が鍛えられることを裏付ける証拠がたくさんある」とシュミット氏は説明する。

■ハイテク技術の光と陰

 シュミット氏によると「魔法」のようなハイテク技術の発展がもたらす恩恵の中で特に重要なものは「翻訳」の機能だ。
 
 たとえば、言葉がまったくわからない国のレストランで食事をする場合、まず携帯電話を取り出してメニューを写真に撮り、その内容を翻訳させそれから注文する、といったことが可能になるという。「こうなると本当に助かりますね」とシュミット氏が話すと、会場から笑い声が上がった。

 一方シュミット氏は、ハイテク技術が金融危機の一因となったデリバティブ取引を可能にし、複雑な金融商品の計算にコンピュータが用いられたことを例に挙げ、技術の発展が世界をより良くするとは限らないことも指摘した。

「テクノロジーで世界が安全になったり予測可能になったりするわけではない。むしろ相互に接続することによって危険が増大し、予測が困難になることもある」と同氏は語った。(c)AFP