【11月1日 AFP】ハロウィーンの31日、全米の街や通りはゾンビや吸血鬼、魔女たちであふれ、悪霊や小鬼に仮装した子どもたちがお菓子を求めて家々を回った。

 年に一度、あらゆる化け物や死者たちが現世に繰り出す祭り、ハロウィーンが近づくと、米国の学校や地域センターはこの祭りの準備で一色だ。

 その一方で最近、ハロウィーンは異教信仰やオカルト崇拝に染まっていると批判する教会や学校、コミュニティなどが増えつつあり、伝統的な祝い方に異を唱える動きが出ている。

■「冥府の住民」と決別、キリスト教保守派

 その先頭に立つのがキリスト教保守派だ。

「多くの信者が、ハロウィーンの有り様に嫌悪を感じている」と、米国のキリスト教保守派団体のなかで最も影響力をもつ「フォーカス・オン・ザ・ファミリー(Focus On the Family)」の創設者、ジェームズ・ドブソン(James Dobson)氏はいう。「元来、キリスト教の周辺には、現在のハロウィーンのような『暗黒の側面』はなかった」

 ギブソン氏は子どもたちに、「冥府」を連想させるような扮装の代わりに、ディズニーのキャラクターのような「健全な」仮装をさせるべきだと提案する。

 メリーランド州のある教会では今年、「おぞましい仮装やゲーム」はいっさい行わず、小学生たちには聖書の登場人物の仮装をさせた。牧師は「われわれは聖書にのっとった教会。恐怖を盛り上げるようなハロウィーンはわたしたちの伝道にそぐわない」と語った。

 今日では宗教的な意味合いがほとんど薄れたハロウィーンは、キリスト教の「万聖節(諸聖人の祝日)」にあたる11月1日の前夜祭で、死者をしのぶ日とされる。しかし元来はキリスト教ではなく古代ケルト人の土着信仰で、夏の終わりを知らせ、魔界に敬意を払う祭りだった。

 ハロウィーンの「オカルト性」を危ぐしているのは米国だけではない。

 ハロウィーンの人気が高まるスペインでも、ローマカトリック教会の指導者たちが今週初め、ハロウィーンは「異教徒」が死後の生を祝う祭りで「反キリスト教的」との見解を示した。

■社会の多様化で宗教色薄める動きも

 一方で、セクシーすぎる仮装の登場や、ハロウィーンに女装してお祭り騒ぎをする同性愛者たちがいることに反発する声もある。

 米国では社会の多様化が進み、国内に様々な移民コミュニティが誕生した結果、新たにハロウィーンに接する移民のなかには不快感を覚える人もいるのではないかという指摘もある。

 伝統的なハロウィーンの「無害化」や、公のハロウィーン行事の中止を進める動きについて、米宗教史が専門のランドール・バルマー(Randall Balmer)コロンビア大学(Columbia University)教授は「多元社会に生きる代償だ」と語る。

 バルマー教授は、さまざまな価値観が共存する社会のなかで、一定の宗教を象徴する物事を公共空間から減らそうという大きな動きがあり、ハロウィーンに代わるものの提案はその一部だとみる。例えば、公立学校ではキリスト教徒でない生徒のために、キリスト教関連の行事を取りやめたり、少なくとも宗教色を薄めて行う学校も現れている。

 メリーランド州のあるチャータースクール(州認可を受けて地域が自主運営する公立校)では、国連の「世界子どもの日(Universal Children's Day)」をハロウィーンの代わりと位置づけ、子どもたちに「おどろおどろしい」仮装ではなく、世界の民族衣装を着せている。(c)AFP/Stephanie Griffith