【8月10日 AFP】アメリカ心理学会(American Psychological AssociationAPA)はカナダのトロント(Toronto)で開催された大会で、「心理療法や精神療法で性的指向を変えることができると患者に請け負うことは避けるべきで、そうした治療はかえって有害だ」とする報告書を発表し、同性愛を病気として扱う心理療法に警告を発した。

 米国では、宗教上の信念から自分が同性愛であることに苦しむ人も少なくない。同性愛を転換する「回復療法」と呼ばれる療法は、特にこうした宗教的に保守的な人びとを引きつけてきた。

 大会で報告された研究では、1960年から2007年の間に実施された同性愛者に対する「回復療法」の症例83件を対象に有効性を調査した。だが、性的指向の転換に精神療法が有効だという支持者や治療士らの主張を裏付ける十分な根拠は得られなかったという。

 回復療法には嫌悪療法と呼ばれる手法が長年使われてきた。これには、催吐剤や電気ショックを与える方法や、公衆の面前で恥辱的体験をさせる方法、恐怖症の治療法である系統的脱感作療法などがある。

 こうした治療法は非人道的だとの認識が1970年代前半には広まったが、現在も続けられているのが実情だ。

 APAではさらに、こうした治療法は自殺念慮、抑うつ症、性的不能、対人障害などの副作用を伴う危険があるほか、高校などの中退率も高くなると警告している。(c)AFP/Virginia Montet