【8月9日 AFP】このアイスクリームは単なるデザート以上のものだと、フランス料理のシェフ、フィリップ・フォール(Philippe Faur)さん(39)は信じている。風変わりな素材のアイスクリーム作りに挑戦し続けているフォールさんのレストランでは、フォアグラ、キャビア、青カビチーズなどのフレーバーの「変わりアイスクリーム」がさまざまな料理に添えて出される。

 フォールさんが営むレストラン「タンプタシオン(Temptations)」は仏南西部のアリエージュ(Ariege)県サン・ジロン(Saint-Girons)にある。この店で提供するアイスクリームは、伝統的なバニラやチョコレート、ストロベリーはもちろん、シャンパン、マスタード、ジンジャー、ラベンダー、リコリス(甘草)、アボガド、サフランなど今や数百種類にも上る。

 フォールさんの店の料理は、さまざまな色彩と素材が組み合わされている。牛肉と青カビチーズのアイスクリーム、カモの胸肉のラビオリとフォアグラのアイスクリーム、ハト肉とフォアグラとトリュフのアイスクリーム、タイとキャビアのシャーベット――グルメも仰天の「ごちゃまぜ料理」だ。肉や魚の料理に冷たいアイスクリームをのせるとソースのように溶け出し、食べると口の中に独特な味わいのハーモニーが広がる。

  フランス各地の有名レストランもこの試みに刺激を受け、メニューの参考にし始めているという。

■挑戦は続く

 フォールさんのアイスクリーム製造法は独自のもので、高品質でおいしいアイスクリームを作るために素材のフルーツやその他の素材を厳選しているという。牛乳は近所の農場でその日の朝搾り、加熱殺菌処理をしていない乳脂肪分が高いものだけを使う。フォアグラはロワール(Loire)地方の特定の産地のものを、キャビアは有名なペトロシアン(Petrossian)社のものを使用する。

 大手製造メーカーではコスト削減のためアイスクリームを2時間で作るが、フォールさんの店では2日かけて作る。「このレストランをあまり大きくするつもりはない。経営的には慎重に成長していきたい。私たちのこころと品質を守るためにね」。フォールさんの店ではレストランのスタッフの他に14人が働いている。

 フォールさんの父親も祖父も、アイスクリーム製造業を営んでいた。「変わりアイスクリームを作り始めたのは2002年のことだ。試してみて、これが私が進むべき道だと心に決めた」。フォールさんは話す。2007年にはリヨン(Lyon)で開かれた国際コンテストで、フォールさんのフォアグラのアイスクリームが「斬新な試み」である点が評価され優勝したこともある。

 最新作は日本から取り寄せたワサビを使ったアイスクリームだ。今はアンチョビを使った新作に取り組んでいる。来年は「世界初」の新たな試みに挑戦する計画があるという。95%がフルーツでできている新しいシャーベットだ。(c)AFP/Alexandre Peyrille