【5月6日 AFP】1000万円近い貯金がありながら、自分の名前を思い出せなかったためにお金を引き出すことができなかったホームレスの韓国人男性が、貧困のなかで死亡した。当局者が6日明らかにした。

 56歳と見られるこの男性は前月、1億2800万ウォン(約980万円)の貯金を残し、がんで死亡した。

 男性は1993年に「Na Hae-Dong」の偽名でこの銀行口座を開いた。しかしその数か月後に汚職対策の一環として偽名口座を禁じる法律が施行され、男性の口座は凍結された。

 こうした口座への預け入れは可能だが、口座名義人が実名で登録していない限り預金の引き出しは不可能だという。

 韓国南西部・光州(Gwangju)市の当局者によると、男性は昼間は鉄くずなどのがらくたを集め、夜は手押し車の荷台でプラスチックシートをかぶって寝るという生活を送り、2007年に運送用コンテナで作った仮設避難所に身を寄せた。

 男性は自分の名前や出生地をどうしても思い出すことができなかったため、預金を引き出すことができなかったが、貯金は続けていた。つねづね、「お金をためて家を買いたい」と言っていたという。

 光州市は前月、男性の新しい身分証明書の作成を認めるよう地元の裁判所に申し立て、手続きが進んでいた。しかし男性の死亡を受け、預金は裁判所の命令により国庫に収められる見通しだという。(c)AFP