【4月20日 AFP】16日から総選挙の投票が始まったインドで、男性でも女性でもない「第3の性」に属するヒジュラ(hijra)と呼ばれる人びとが重大な問題に直面している。
 
 インドには、男性から女性への性転換手術を受けるなどしたヒジュラが約100万人いると言われている。インドの選挙では投票箱が男女別に別れているため、性別を明確にしたくないヒジュラの人びとの多くが投票を棄権しているのだ。

 女性として投票に臨むヒジュラもいるが、多くは男女別の明確化を拒否し、身分証明書の性別欄に「第3の性」を設ける運動を進めている。

 こうした運動に取り組むヒジュラの活動家、ラクシュミ・ナラヤン・トリパティ(Laxmi Narayan Tripathi)さんは選挙で投票した経験がない。今後も「第3の性」が認められるまでは、投票する意志はないという。「インド憲法さえヒジュラを無視している。これはヒジュラのアイデンティティーに関わる問題なのです」

 ヒジュラの多くは、社会から疎外されて暮らしている。まっとうな仕事への就職機会も与えられていないため、物ごいや売春などで生計を立てている者も多い。

 偏見と闘いながら「第3の性」の確立に向けた活動を続けてきた結果、ヒジュラへたちはいくつかの成果を手にした。その一つが、旅券や公式書類のいくつかについて、性別欄に男性でも女性でもない「E」の項が設けられたことだ。

 しかし、保守的な傾向が比較的強いインドで、ヒジュラ専用の投票箱が設けられるまでの道のりは遠い。

 同様に、女性として立候補し当選したヒジュラもいるが、政治家としてヒジュラの権利拡大に従事したいとの意欲があっても、ヒジュラとして立候補することは難しい。

 東部オリッサ(Orissa)州の選挙管理委員会は前月、立候補を申し出たヒジュラ3人に対し、男性か女性かを明確にしない限り、立候補は認めないと宣告した。
 
 インドに存在する社会的少数派グループのなかでも、ヒジュラ人口は多くはなく票田として期待できないため、おそらくヒジュラの権利に耳を傾ける政党は出てこないだろうと、民主改革推進団体のアニル・ベアウォル(Anil Bairwal)氏は危ぐしている。(c)AFP/Yasmeen Mohiuddin