【4月20日 AFP】エジプトの考古学チームは19日、エジプト・アレクサンドリア(Alexandria)西部の神殿タップ・オシリス・マグナ(Taposiris Magna)で、クレオパトラ(Cleopatra)の墓があると思われる場所の発掘を開始した。クレオパトラは、2000年前に恋人のマルクス・アントニウス(Mark Antony)の隣に埋葬されたとされる。

 エジプト考古最高評議会(Egyptian Supreme Council of AntiquitiesSCA)事務局長のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)博士とドミニカ共和国のエジプト学者、キャスリーン・マルチネス(Kathleen Martinez)氏が率いる調査隊は、紀元前約300年にエジプト神イシス(Isis)に捧げられたとされるこの神殿で、3年前から調査を続けてきた。アレクサンドリアから西に50キロのこの地では、古くは19世紀に、ナポレオン(Napoleon)遠征隊が発掘作業を行っている。

 マルチネス氏は、これまでに発見された男性頭部の彫像、あごが割れているマスクの破片、コインなどから、アントニウスはこの神殿に埋葬されているとにらんでいる。また、クレオパトラの遺体もその付近にあるはずだと信じている。「クレオパトラとアントニウスが一緒に埋葬されたことは帝政ローマの伝記作家、プルタルコス(Plutarch)の著作にも記されています」とマルチネス氏。

■「クレオパトラの墓は絶対ここにある」――マルチネス氏の信念

 弁護士を目指していたこともあるマルチネス氏は、クレオパトラとアントニウスの墓の発掘は「趣味で始めた」と語る。

 マルチネス氏は、クレオパトラの研究を14年間続けてきた。その結果、クレオパトラはわざとコブラに噛まれて自殺したとの定説に対し、「クレオパトラは宗教儀式の一環として、コブラに噛まれ、タップ・オシリス・マグナに埋葬された」との自説を立てた。「彼女が(恋人の)アントニウスとは別の場所に埋葬されたとは考えられない。彼女もイシスに守られていたはずだ」(マルチネス氏)

 彼女の説は、最初は専門家からそしりを受け、発掘許可を得るまでに6年を要した。だが現在では、エジプト考古学の最高権威であるハワス博士でさえも彼女の説を熱烈に支持している。仮に2人の墓が発見されると、同国では、英国人の考古学者ハワード・カーター(Howard Carter)が1922年にツタンカーメン(Tutankhamun)の墓を発見して以来の大きな発見となる。

 クレオパトラの墓がこの神殿に埋葬されていることを示す大きな手がかりとなった陶製の破片は、ハンガリーの調査隊が4年前に発掘作業を終えた場所からわずか数センチのところで発見された。発見したのは、マルチネス氏の調査隊だ。「ビギナーズラックが物を言うかもしれないわね」と同氏は言う。

 これまでのレーダー調査で、地中に墓所とおぼしき2つの大きな部屋と通路があることがわかっている。調査隊は現在、クレオパトラの墓に通じる通路の入口を探している。(c)AFP/Cris Bouroncle