【3月17日 AFP】米テキサス(Texas)州オースティン(Austin)で開催中の音楽やIT関係の祭典「サウス・バイ・サウスウェスト・インタラクティブ・フェスティバル(South By Southwest Interactive FestivalSXSW)」で13日、科学分野での著書が高い評価を得ているスティーブン・ジョンソン(Steven Johnson)氏が講演し、「新聞は衰退していくが、ジャーナリズムは進化する」との持論を語った。

 ジョンソン氏は、新聞メディアを老齢化した森林に例え、その古い生態系のもとで、ブログや市民ジャーナリズム、「ツイッター(Twitter)」のようなマイクロブログサービスなど、インターネット時代の情報共有文化が根付いていると語った。

「わたしは報道の未来について、非常に楽観的だ」と語るジョンソン氏だが、新聞業界の現状は楽観視できないという。

「新聞業界に起きていることについては楽観視していない。新聞業界は醜く、今後もますます見苦しくなっていくだろう。有能な記者たちが職を失い、多くの都市から地元紙が消えていくだろう」(ジョンソン氏)

  ジョンソン氏は、こうした変化は、以前から予見されていたにもかかわらず、無視されてきたと推測する。そのため、10年間かけて徐々に起こったであろう変化が、世界的な経済危機による影響もあり、1-2年の短期間で急速に起こってしまったのだという。

「まず、新聞ビジネスは消滅するとのパニックがある。また、重要な情報が新聞とともに消滅してしまうとのパニックがひろがっている。多くの時間を費やして、旧式の生活支援モデルを維持する方法を探ってきたが、新しい手段を確立する取り組みには手をつけてこなかった」(ジョンソン氏)

 ジョンソン氏は、新聞業界はインターネット上で無料公開が可能な記事を、紙に印刷するという資源の無駄遣いを中止すべきだと主張する。新聞印刷を止めれば、森林破壊もくい止められる。「印刷を廃止すれば、かなり楽なビジネスモデルになるだろう。印刷コストが無くなるのだから」

 インターネット上で450件あまりの出版物を公開しているIDGInternational Data Group)のパトリック・マクガバン(Patrick McGovern)会長も、AFPとのインタビューで、ニュースや画像、動画の無料コンテンツに慣れきったインターネットユーザーであっても、地元に密着した電子版新聞ならば、毎月の購読料を払って読みたいと考えるだろうと語っている。

 一方、ジョンソン氏は、未来のニュースは、プロの記者に加え、ブロガー、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のフェースブック(Facebook)や「ツイッター」のユーザーらの提供する情報が全て織り込まれ、読者の身の回りで起きていることが瞬時にわかるようなものになると予測する。

 ミックスされて届けられる情報のなかには、もちろんバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領といった著名人のストリーミング(ライブ動画)配信も含まれることになる。

「うわさ話と事実の区別が不可能になると仮定すれば」、熟練記者をそろえ、信頼できるという評判を獲得し、数千人規模のユーザーが毎日閲覧するサイトを運営している組織が、新聞と呼ばれることになるだろうとジョンソン氏は語る。ジョンソン氏は、インターネット時代の新聞の標語として「リンクに適したすべてのニュースを(*注)」と提案し、講演を締めくくった。(c)AFP/Glenn Chapman

*「活字に適したすべてのニュースを」とのニューヨーク・タイムズ紙の標語のパロディ