【1月28日 AFP】スイスとオーストラリアの研究チームによると、1912年に起きた豪華客船タイタニック(Titanic)号の沈没で、英国人犠牲者の多くは紳士的な対応をとったことが原因で死亡した可能性がある。

 スイス・チューリヒ大学(University of Zurich)の経済学者ブルーノ・フレイ(Bruno Frey)氏と、オーストラリアのクイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology)の研究者らがタイタニック号の乗員乗客2200人の経済的、社会的背景を分析したところ、乗船していた英国人は、他の国籍の人びとと比べて生存率が10%ほど低かったことがわかった。

 スイス通信(ATS)によると、研究チームは、「ノブレス・オブリージュ(社会的地位の高い者の責任)」、あるいはマナーの良さが、救命ボートへと殺到することに何らかの影響を及ぼした可能性があるとの見方を示した。

 同チームの研究はまだ発表されていないが、研究チームは、タイタニック号のような状況下においても「女性や子どもを優先する」といった社会規範が、氷山衝突からおよそ3時間にわたって維持され続けていたと結論づけたという。

 フレイ氏は、「生きるか死ぬかの状況で人びとがどのような行動をするのかに関心があった」と述べた。

■生存率高い女性、乗員、アメリカ人

 タイタニック号には十分な数の救命ボートが無く、不沈船と呼ばれたタイタニック号が初航海で沈没したときに約1500人が死亡した。

 研究によるとアメリカ人の生存率は乗客乗員全体の生存率より高かった。また女性の生存率も全体の生存率より53%高く、再生産年齢(妊娠・出産できる年齢)の女性の生存率はさらに高かった。一方、児童は成人と比較して生存率が15%高いだけにとどまった。

 乗員は、生存率が18%高かった。救命ボートなどの場所を知っているという「情報の優位」があったためだとみられる。

 一方で、健康状態や文化背景も生存率の要因となった。中でも社会階層は、注目すべき要因となった。

 研究では、1等船室に乗船した富裕層は、3等船室の乗客と比べて生存率が40%高かった。3等船室の乗客は船体の奥に隔離されており甲板に出ることすら困難な場合が多かった。(c)AFP