【12月23日 AFP】社会主義国家ベトナムの首都ハノイ(Hanoi)で、東洋の妖えんなベリーダンスが、新しい自己表現の形として女性たちをひきつけている。

 ベリーダンスがハノイに上陸したのは2年前。以来、6つの舞踏スクールが誕生し、1000人を超えるハノイ女性がレッスンを受けている。ベリーダンススクールに通う女性たちの職業は、学生、会社員、ジャーナリストから警察官とさまざまだ。

 アジア各地でベリーダンスを教えてきた韓国人ダンサーのアラ・ファン(Ara Hwang)さんは、都会のベトナム女性たちが、数百年も前にアラブ文化圏で生まれたベリーダンスに、即座に反応したことに驚いたという。ベトナム社会の急速な変化を物語る動きといえるだろう。

「ベトナムでは、率直に感情を表すことを良しとしない伝統がある。だが、ベトナム女性たちは非常に強い意志を持っている。こうした女性たちにとって、ベリーダンスは自己表現の手段となっているのでは」(ファンさん)

「ベリーダンスのおかげで、自信が高まった」というジャーナリストのフォン・ジャン(Huong Giang)さんは、取材をきっかけにベリーダンスにはまった。ベリーダンスは「エロチックで刺激的で、日常とは別世界」と話す。

 しかし、すべてのベトナム人がベリーダンスを大歓迎したわけではない。ベリーダンスを踊る女性たちは、父親や夫やボーイフレンドを説得する必要があったようだ。
 
 大学でマーケティングを学ぶグエン・キュー・チン(Nguyen Kieu Trinh)さんは、子どものときに見た中東やインドの映画がきっかけでベリーダンスを始めた。しかしボーイフレンドは当初、グエンさんがベリーダンスを踊ることを嫌がった。だが今では「ベリーダンスがもたらす心身の変化や幸福感を理解し、今は踊ることを応援してくれている」という。

 11日にハノイ市内の高級レストラン「サムヴィラ(Sum Villa)」で行われた第2回ベトナム・ベリーダンス・フェスティバルには500人以上が参加。同国初の男性ベリーダンサー、ケビンQ(KevinQ)さんも登場し、トライバル系ゴシックベリーダンスをソロで踊り、観衆を魅了した。

 通常、露出度の多い米国映画や水着姿の美人コンテストなどには厳しい取り締まりで臨むベトナム政府だが、ベリーダンス・フェスティバルについてはゴーサインを出した。

 ファンさんによると、当初、フェスティバルの開催の行方は不透明だった。しかし、当局関係者がリハーサルを見学した結果、ベリーダンスを芸術と認め、公演が許可されたという。

「ベトナム人、なかでもベトナム女性は高い受容性を持つ人びと」とみるファンさんは、「2年後のベトナムは、さらに変革を遂げているだろう。ベリーダンスは一種の『革命』ともいえる」と話す。(c)AFP/Frank Zeller