【12月19日 AFP】オーストラリアの動物病院で看護師をしているニコール・ジョージ(Niccole George)さん(24)は、電話口の向こうで泣きじゃくる声に無力感を覚えていた。電話の主は、ペットの大型犬グレート・デーンの様子がおかしいのだけど、自分には病院に連れて行けるだけの体力がないと助けを求めていたのである。

 この電話がきっかけとなり、彼女はパートナーのガレス・オコナー(Gareth O'Connor)さんとともに、24時間対応のペット救急搬送サービス会社「PetMedics」を立ち上げた。「あのときは何もできずに悔しい思いをした。わたしにもできることはないかと考えた。わたしたちにもできること、それがペット救急サービスだったのです」とジョージさん。

 会社の設立にあたっては、非営利団体(NPO)から資金援助を受け、バンを1台購入。だが、ペットサイズの医療器具をそろえるのはひと苦労だった。

 オコナーさんはメルボルン(Melbourne)の製箱会社に直談判して、分厚い防水シートでペット用ストレッチャーを製作してもらい、ジョージさんは米国に飛んで、獣医師会からペット用の酸素吸入器を分けてもらった。蘇生装置は比較的容易に手に入ったが、接合部だけはペット用に改良する必要があった。

■金融危機の影響はなし

 サービスは2007年末に開始された。料金は、1回の出動につき85オーストラリア・ドル(約5200円)。当初はひと月に1、2回程度しか電話は鳴らなかったが、その後徐々に増え始め、現在は大体1日に2回以上の出動要請がある。金融危機で、ペットを捨てたりペットにかける費用を減らす飼い主が多いと言われるなかで、出動要請が減ることはないという。

 オーストラリアの王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to AnimalsRSPCA)は最近、過去6か月にシドニー(Sydney)の動物保護施設に捨てられたイヌやネコの数は、前年同期の約2倍に達したと報告した。 

 だが、ある獣医は「金融危機にもかかわらず、ペット用スパや豪華なケア施設が出現するなど、ペットケアにお金をかける傾向は続いている。ペットの概念は変わりつつあるのではないか」と指摘している。(c)AFP/Glenda Richard