【12月9日 AFP】ニューギニア(New Guinea)島中西部のインドネシア・パプア(Papua)の先住民族、スロバ(Suroba)さんは鳥の羽とひもに「コテカ」とよばれる木製の筒で腰回りと男性器を覆っただけの姿で暮らしてきた。しかし、スロバさんのような地元部族の伝統的な衣装が違法となる危機に瀕している。

 パプアから3500キロメートルも離れた首都ジャカルタ(Jakarta)の議会で、長年にわたる論争の末、多数派のイスラム系議員が推進するポルノ禁止法が10月に採択され、「コテカ」がこれに抵触するおそれがあるためだ。

 新法では、公衆道徳を侵害する恐れがある「作品」や「動作」はわいせつとみなされ、罰則対象となる。

 だが、反対派は、ポルノ禁止法の定義はあいまいで、スロバさんが身に付けているパプアの伝統的な「コテカ」や、裸体の像が彫られたバリ島のヒンズー教寺院までが禁止対象となる恐れがあると抗議している。

 ポルノ禁止法はスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)大統領が近く署名し発効するが、こうした声をうけ、固有の地元文化を保護する条項が加えられた。だが、反対派は不十分だとしている。

 ジャカルタには、キリスト教徒が多数を占める地域や土着宗教を信仰するパプアから数千人が集結し、同法に抗議。抗議活動を市民運動に発展させることも辞さない構えだ。

「ポルノ禁止法は明らかに、パプア伝統文化への脅威だ」と パプアの慣習保護委員会のメンバー、レモク・メーベル(Lemok Mabel)さんは危惧(きぐ)する。「抗議運動は避けられない。原住民としてパプア人の権利を侵害するものだからだ」

 同委員会のドミニカス・ソラブト(Dominikus Sorabut)さんも、ニューギニアの山岳地帯で通信手段もなく文字を解さない部族は、ポルノ禁止法の知識がないまま、突然、警察官に逮捕されるのではと懸念している。「同法は、相当大きな紛争の火種となる可能性がある」

 かつて1970年代にも、同様の規制が導入されたことがあったが、全く効果はなかった。スロバさんは語る。「われわれは昔から『コテカ』を身に付けてきたし、今でもそうしている」(c)AFP/Aubrey Belford