【12月5日 AFP】ことし米国人の心に最も残った言葉は、「bailout(ベイルアウト、救済)」――米辞典大手メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)が1日、同社辞書サイトの2008年度英単語検索ランキングを発表した。

■最も調べられた言葉は「bailout」

 ランキング1位に輝いた語は「財政難からの救済」を意味する「ベイルアウト(bailout)」。句動詞で「bail out」になると「落下傘で脱出する」、転じて「危険な状況、困難な状況から逃げる」という意味があり、いずれも「危機回避」を指しているという。

 2位は「vet(入念に調べる)」。米大統領選で「候補者の(大統領としての)適正や資質を厳しく吟味する」という文脈で使用された。

■3位は米国人が知らない「社会主義」

 3位は「socialism(社会主義)」。サイトを総合監修したピーター・ソコロウスキー(Peter Sokolowski)氏によると、米国では「社会主義」は「禁句」だが、国内の経済が苦境に陥り、米大統領選が大詰めを迎えた9月ごろから、検索数が増え始めた。

 公的資金を使った企業の救済(bailout)に対し、それは社会主義(socialism)経済だという批判が激しく行き交った時期だ。また、大統領選では共和党候補ジョン・マケイン(John McCain)氏が、民主党候補バラク・オバマ(Barack Obama)氏を攻撃する際、「オバマ氏は米国を社会主義化する」など「社会主義」という語を頻繁に使用した。

 ソコロウスキー氏は「『社会主義』が検索の上位に入るとは意外で面白いが、明らかに米国人は『社会主義』とは何なのかを知らないということだろう。この国では『社会主義』は悪の根源のように扱われてきたから、『社会主義』の何がいけないのか、調べようとした人が多かったのでは」と分析する。「ニュージーランドやフランス、デンマークやカナダなど、社会主義的制度を誇る国では事情は違うだろう」

 4位は「maverick(無党派層、一匹狼)」。これも米大統領選で、マケイン氏を表すときに多用された。この語はテキサス州の開拓者、サミュエル・マーベリック(Samuel Maverick)に由来する。この人物はほかの家畜所有者たちと違い、自分の牛に焼き印を押さなかったことから転じて、グループや党に属さない独立した個人を指すようになった。

■ヒラリー・クリントン氏とペイリン氏がきっかけとなった語

 大統領選・政策関連でランクインしたものには、「bipartisan(2大政党連携の、超党派の)」、「misogyny(女嫌い)」、「rogue(悪党)」がある。

 なかでも「misogyny(女嫌い)」は1年を通じて検索数が多かった。大統領選の民主党候補選びでオバマ氏と最後まで争ったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏に対するメディアや民主党幹部の態度を、コメンテーターたちはこの1語で表現した。また、有権者が女性大統領を選ばない傾向を説明する際にも使われた。

「rogue(悪党)」は、米大統領選の終盤、共和党副大統領候補サラ・ペイリン(Sarah Palin)氏について使われたのを機に、検索数が上昇した。マスコミは「彼女はアドバイザーの忠告に耳を貸さない『going rogue(悪党だ)』」などと書き立てた。

■金融危機からは不安を反映する言葉

 トップ10のうち、5つが国際金融危機、5つが米大統領選関連の言葉だった。 

 6位の「trepidation(恐怖)」、7位の「precipice(窮地)」、10位の「turmoil(混乱)」はいずれも、金融危機への言い知れない不安を反映した。(c)AFP/Karin Zeitvogel