【8月4日 AFP】第二次大戦時にナチス(Nazis)が連合軍の上陸に備え、デンマークの西海岸に7000個構築したとされるトーチカ。懐中電灯を握りしめたままそのトーチカから這い出てきたTommy Cassoeさんは、「デンマークのインディ・ジョーンズ(Indiana Jones)」と呼ぶにふさわしい。

 Cassoeさんは「ミッション終了。これで全部だよ」と叫びながら、見物人たちの目の前に「戦利品」・・・さびついた缶、マスタードガスに対する解毒剤が入ったビン、電気コードなどを広げて見せた。

 1945年以来HouvigKrylen海岸の砂丘に埋もれていたナチスの4つのトーチカが、今年5月に当地を襲った嵐により、63年ぶりにセメントと鉄骨でできた外観を現した。中からはベッド、イス、テーブル、通信機器、兵士の持ち物などが、当時の状態のまま発見され、Cassoeさんのような歴史通や考古学者らにとって「センセーショナル」な出来事となった。 

 ナチスはこうしたトーチカをデンマーク国内に8000個、うち西海岸だけで7000個建造した。こうしたトーチカの装備品は、鉄鋼や電気機器が不足していた戦後、デンマーク人がことごとく持ち去った。 

■「ツタンカーメンの墓の発見にも匹敵」か「吹き飛ばすべき残骸」か

 当時のままの4つのトーチカを、9歳の男の子2人が発見したというニュースが地元紙に掲載されると、子どもの頃からトーチカに魅せられてきた電気技師のCassoeさんは現場に一番乗りした。

「ミイラが並べられたピラミッドの中心部に入っていくようだった。入口をふさいでいた砂を掘って中に入ると、ぶっ飛んだね。ドイツ兵たちは昨日去ったばかりなんじゃないのかって錯覚を覚えたよ」とCassoeさん。

 略奪者を恐れる専門家や考古学者も現場に急ぎ、Cassoeさんと共同発掘作業を開始。数日間で軍靴、下着、ソックス、袖章、マスタードとアクバビット(蒸留酒)のボトル、本、インクビン、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の肖像が入った切手、薬品、ソーダのビン、鍵、ハンマーなど、すべての品を発掘した。これらは分析のため、海岸から30キロ離れたOelgod博物館に運ばれた。 

 このトーチカ発見のニュースは大々的に報じられ、Krylen海岸にはこの夏、国内のみならず隣国ドイツからも観光客数千人が押し寄せている。

 対ナチスのレジスタンス活動に参加した祖父を持つあるデンマーク人は、「この発見はある意味、ツタンカーメンの墓の発見に匹敵する。トーチカは保存すべきだ。破壊することは第二次大戦の存在自体を否定することに等しい」と話した。

 一方で、地元紙には「全部吹き飛ばすべき。こんなゴミのために観光客を呼びたいなんて、むしずが走る」との読者の声も寄せられた。(c)AFP/Slim Allagui