【7月16日 AFP】ケニアのムワイ・キバキ(Mwai Kibaki)大統領は14日、改装が終わったケニア国立博物館(National Museum of Kenya)の開館式に出席し、「植民地時代に盗まれた工芸品を返還してほしい」と世界に呼びかけた。

■観光復興には工芸品が必要

 前年末の大統領選挙の結果をめぐり暴力行為が多発し、観光業が大打撃を受けたケニアは現在、観光業の再生に全力を挙げている。大統領は、「だからこそ、特に植民地時代に国外に持ち出された、わが国の歴史・文化遺産である数々の工芸品を取り戻すためにあらゆる手を尽くさなければならない」と熱弁を振るった。

 ケニア政府は約1年前、米シカゴ(Chicago)のフィールド博物館(Field Museum)に対し、同博物館所蔵の人食いライオン2頭の毛皮などを返還するよう求めた。この2頭のライオンは、1890年代にケニアで鉄道建設作業員のインド人少なくとも140人を殺害し、1898年に英国人の橋梁技術者ジョン・パターソン(John Henry Patterson)大佐に銃殺された。このパターソン氏とライオンの戦いは、1996年の『ゴースト&ダークネス(The Ghost and the Darkness)』で映画化されている。

■植民地時代、大量の盗難に

 1905年に英国に持ち出されたナンディ人の首長の杖や祈とう道具などは2006年に返還された。また、同年には、米イリノイ州立大学(Illinois State University)とハンプトン大学(Hampton University)が、ミジケンダ人の木彫りの聖像「vigango」2体を返還している。

「vigango」は20年以上前、ミジケンダの複数の長老の墓から大量に盗まれた。研究者らは、これまでに米国内の19の博物館に294体あることを確認している。ハンプトン大学博物館だけで98体所蔵していると考えられている。

 ミジケンダの長老たちは、聖像が盗まれたことは「ミジケンダの不幸な過去」として語り継がれるだろうと話している。

 アフリカの他の国々、とりわけエチオピアも、植民地時代に持ち出された工芸品を返還するよう、国際社会に積極的に働きかけている。(c)AFP