【6月27日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)に住む大学生、Siddhi Sarangdharさんは毎朝、通学列車に乗るたびに無事大学までたどり着けることを祈る。彼女が乗るムンバイの鉄道は、1日平均12人が命を落とす、世界で最も混み合った、そして最も危険な鉄道なのだ。

■ラッシュ時の乗車率250%、4か月で死者1000人超

 1800万人が住むムンバイを走る列車は毎日、ニューヨーク(New York)の地下鉄利用客の6倍にあたる650万人を、市中心部まで運ぶ。鉄道当局によれば、「激混み時間(super dense crush load time)」と呼ばれる通勤通学のラッシュ時には乗車率は250%にもなり、定員200人の車両に500人が詰め込まれる。

 鉄道警察の発表では、昨年は3997人が死亡、4307人がけがをした。今年は、1-4月ですでに1146人が死亡し、1395人が負傷している。ちなみに、ニューヨーク地下鉄の年間平均死者数は8人だ。

■死因1位は落下、2位は線路立ち入り

 死因の3分の1、負傷原因の多くを占めるのは、混雑のため車両に乗り込むことができず、車両の端につかまった状態で無理やり「乗車」したものの、手が離れてしまったというケース。鉄道当局は「乗客数を制限するという手もあるが、どちらにしても人々は出勤しなければいけない。こうした人々は線路に座り込んで列車の運行を邪魔する」と話す。

 線路上を歩いていて列車にはねられるというケースも、死因の半分近くを占める。隣のホームに移動する陸橋が整備されていないためで、線路を渡るのは違法だが、インドでは珍しくないという。

■対策を上回るペースで乗客数が増加

 鉄道当局も違反者への罰金、フェンスの設置、陸橋が必要な場所の調査などを行い、事故防止の努力を進めているが、「誰だって隣のホームに渡るために1キロ先の陸橋を使おうとは思わない」と当局者もあきらめ顔だ。

 ムンバイでは、市内の公共交通機関整備のため、2015年までに世界銀行(World Bank)からの融資を含めた20億ドル(約2140億円)が充てられることになっており、車両の数や運行数を増やす努力も進められている。しかし、市の努力を上回るペースで乗客数は増加している。(c)AFP/Ambreen Ali