【4月22日 AFP】アルゼンチンのネオナチス組織は前週末、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)に敬意を表すことを目的に、秘密のロックコンサートを開催した。司法当局が21日に明らかにした。招待状はインターネットを通じて送られたという。政府はこうした動きに警戒を強めている。

 アニバル・フェルナンデス(Anibal Fernandez)法務人権相は地元のラジオ局に、「週末のコンサートについて調査を進めている。入場料と開催の手順については把握している」と語った。

 さらに、第二次世界大戦中にナチスを率いて最後に自殺したヒトラーを狂信的に崇拝する動きが高まりつつある動きがあるとして、「このコンサートがなぜ行われたのか、そして参加した子どもたちの動機は何だったのかという、この出来事の背景について不安を感じている」と話した。

 このネオナチス組織のウェブサイト「La revuelta va(継続する革命)」に掲載された告知には、「コンサートの目的は、自分たちの音楽、友情、ビールを楽しむこと。一番重要なのはアドルフ・ヒトラーの誕生日を祝うことだ」と書かれている。ただ、コンサート会場の場所については秘密だという。

 コンサートの手配は地下活動グループが行った。その1つである、「Legion Pretoriana」は、人権保護団体によると、1976年に誕生し83年まで続いた同国最後の独裁政権といわれる軍事政権を積極的に支持したという。この時期、約3万人もの死者・行方不明者を出した「汚い戦争」が勃発している。

 アルゼンチンには30万人以上のユダヤ人が形成するコミュニティがあるが、この日「過ぎ越しの祭り(Passover)」の祝日を迎えていたユダヤ人たちからは、この件に関する早急な反応はないという。

 第二次世界大戦末期に第三帝国が崩壊すると、アルゼンチンには大量虐殺を謀議したとされる数百人のナチス将校が逃亡した。その中には、ゲシュタポの長官だったハインリヒ・ミュラー(Heinrich Muller)や強制収容所の医師だったヨーゼフ・メンゲレ(Joseph Mengele)などもいる。

 1950年には戦犯のアドルフ・アイヒマン(Adolf Eichmann)もアルゼンチンに逃亡した。だが、10年後にイスラエル秘密情報機関よって捕らえられ、エルサレム(Jerusalem)で裁判にかけられ、1962年に絞首刑になっている。(c)AFP