【3月26日 AFP】米ドルが継続的に値を下げ、輸出収入に大きな打撃を受けているチリのワイン業界は、ワインの品質向上に躍起になっている。

 チリ輸出促進局(ProChile)のPaola Vasquez氏はAFPに対し、「チリは品質は良いが安いワインの生産国だというイメージをぬぐい去る。これがチリの戦略の根本となるものだ」と語る。

 ワイン生産者は利益の薄い市場から抜け出そうと努力していると同氏は説明する。ここ1年で米ドルはチリのペソに対し、13%近くも値を下げた。これにより、チリのワイン生産者は経営危機に追いやられている。

 多くの生産者は首都サンティアゴ(Santiago)の南150キロにあるコルチャグア渓谷(Colchangua Valley)に注目している。ここは、米ワインガイド誌ワイン・エンスージアスト(Wine Enthusiast)の2005年版で世界一のワイン生産地と評された地域だ。

 週末、同渓谷の小さな町サンタクルス(Santa Cruz)では伝統的な収穫祭が行われた。しかし、Caliterraブドウ園の統括マネージャーAndres Barros氏は「大規模な経営危機」がせっかくの祭りを台無しにするとみている。

「多くのワイン生産者が今年計画していた投資の延期を検討している」とし、「このような危機的状況を乗り越えるためには、より価値のあるワインに重きを置き、値上げをする勇気を持たなければならない」と指摘する。

 18のブドウ園をとりまとめる組織の代表Mario Pablo Silva氏も、より良質なワインを作ることで輸出向け価格を引き上げられるよう努力がなされていると語る。

 ワイン製造会社「カリテラ(Caliterra)」の経営者Klaus Schroeder氏は「われわれはすでに上級ワインのラインに集中し、改善している」と語る。同氏はコルチャグア渓谷の底でブドウを栽培する計画があることを説明した。深い土地では、より良質なブドウが生産できるとみているのだ。

 販売戦略も練り直されつつある。ワイン販売会社の経営者Maximiliano Morales氏は「個性的な渓谷に複数のブドウ園がある。ワインの品質を向上させるため、これらの渓谷のどの地域が最も優れているのかを見極め、それを1つのマーケティングツールとして利用しようと考えている」と語る。これにより、フランスやスペインのように特定の地域の評判を確立することができるのだという。

 同氏は「ほかとは違うワインを作るためには、細かい部分や製造過程に気を配らなければならない。ワインの種類に適した土壌の状態だけでなく、最良のワイン製造手法やワイン醸造学、発酵方法、ワインを寝かせるためのたるに使われる木材の質、コルク、ビンなどにも気を配らなければならない」とし、「これらの要素をすべて合わせることで、ワインの質、つまり複雑さ、色、香り、寝かせる期間、そして国際的評価を大きく高めることができる」と指摘する。

 チリは前年、10億ドル(約1000億円)相当のワインを輸出した。うち52%は欧州向けで、米国、カナダ向けがそれに続いている。(c)AFP/Natalia Ramos