【3月13日 AFP】(一部更新)第11回全米記憶力選手権(USA Memory Championship)がこのほど、ニューヨーク(New York)で開かれた。最年少は14歳で、43人が自慢の記憶力を競った。

 予選では、99の名前や写真、20けたの番号群、トランプカードの並び順を覚える競技が行われた。これらの競技を勝ち抜いた者が、サドンデス方式の決勝戦、「50行詩」で記憶力ナンバーワンを競う。

 競技中の会場には緊張感がみなぎる。「非常に大きなストレスとプレッシャーがかかるが、その出口はない。息を深く吸い込んで集中し、心の中にイメージを結ばなければならない」と、前回の優勝者、デビッド・トーマスさん(David Thomas、39)は語る。

■テクニックを習得すれば、誰でも記憶の達人に

 今年の優勝者、ソフトウェアエンジニアのチェスター・サントスさん(Chester Santos、30)によると、記憶のテクニックは人それぞれだと言う。サントスさんは、以前は最も一般的な「ローマンルーム」法(記憶を場所になぞらえる方法)を使っていたが、今回は「人物、行動、対象」法なるものを採用した。

 例えば、ハートの7をテニスクラブの少女とし、クッションを持っているのがスペードのクイーン、クッションを洗っているのがスペードの7、という風に、人と行動をカードに関連づけるのだという。「おたくと言われそうですが」とサントスさん。

 ベスト5に入った米海軍情報部員のロニー・ホワイトさん(Ronnie White、33)も、同様の方法を数字を記憶する競技で使用した。ホワイトさんはアフガニスタンから帰国したばかり。3けたの数字を頭の中で映像化し、これらを基地に関係する人物や建物に関連づけたという。例えば数字の228は、実際の体験に基づいた「堅物の大佐がネオン色の靴を履いているイメージ」だそうだ。

「記憶のこつはひたすらテクニックの問題で、メンタルとは関係がない。テクニックさえつかめば誰にでもできる」と話す先のトーマスさんは、過去最多の2万2500桁の数字を記憶している。

■優勝したら億万長者になるチャンスも

 コンテストの優勝者には、ビジネス・チャンスが舞い込むこともある。過去の優勝者の2人が100万ドルで本の出版に契約している。

 トーマスさんは、これまで2万5000人以上に自身の記憶テクニックを伝授した。彼のテクニックは顧客名や製品情報を記憶するのにも有用だ。だが、テクニックを適用できない場合はトーマスさん自身もそれほどは記憶できないため、買い物には買い物リストが欠かせないそうだ。

■修行増のような生活で脳を鍛える

 参加者の多くは、血のにじむような努力をして大会に臨む。優勝したサントスさんは集中トレーニングを3か月以上、1日2時間の脳トレ、そしてアルコールをとらず甘い物も一切食べないという生活を送ってきた。「食べるものまで気にしない」というトーマスさんのような例外もいるが。

 世界一を決める決勝戦はバーレーンで開催される。欧州は米国より10年以上も前から記憶力コンテストを行ってきたということもあり、欧州のチャンピオンたちは強豪だという。「勝てるかどうかわからない。バーレーンがどこにあるのかも知らないんだ」と、サントスさんは語った。(c)AFP/James Hossack