【1月27日 AFP】スコットランド名物の「ハギス(haggis)」と呼ばれるプディングが、危機にさらされている。近年若者が精肉店や精肉加工を就職先として敬遠していることが原因という。26日の英朝刊紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times FT)が伝えた。

 ハギスは羊の心臓、レバー(肝臓)、肺、オートミール、ハーブ、スパイスなどを羊の胃袋に詰めた料理。スコットランドでは、ハギスを「数あるプディングの最高峰(great chieftain o' the puddin' race)」と称賛した国民的詩人ロバート・バーンズ( Robert Burns)の生誕を祝う1月25日の「バーンズ・ナイト(Burns Night)」に、特別料理として食卓をにぎわせてきた。

 スコットランド技術向上評議会(Scottish skills council Improve)のジャック・マシューズ(Jack Matthews)理事長はフィナンシャル・タイムズ紙に、ハギス作りの伝統的手法と高級感はスコットランド産業の縮図だと語る。マシューズ理事長は、「生産者は技術をもった労働者の確保は難しいとみており、労働力の不足のために産業が拡大しない」と指摘する。「喜んで技術を教えたいが、子どもたちの多くは習うことに関心がなく、働くための基本的な技術が不足している」と理事長は嘆いた。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、バーンズ・ナイトでのハギスの売上げが、スコッチ・ウイスキーによる食欲促進もあり最大100万ポンド(約2億1000万円)に上るとみている。

2007年の全スコットランド・ハギス・チャンピオンシップ(Scottish Haggis Championship)で優勝した精肉職人アラン・エリオット(Alan Elliott)さんは、通信販売を利用して販路の拡大を計画しているが、職人確保が難しいと打ち明ける。

 エリオットさんは、若者はもはや精肉加工をやりたい職業と考えていないと話す。それでも、「精肉業界は最新の機材を導入しているうえ、高い水準をもっている。血や内臓を処理しているだけではない」とアピールを忘れなかった。(c)AFP