【10月14日 AFP】普段は街路のベンチで寝ているホームレスのトム・マーフィー(Tom Murphy)さん(49)は、実は全米で2番目の段位を所有するチェスの名人。チェス愛好家の間では「セレブ」として名をはせている。

■広場のチェスの名人

 ワシントンD.C.(Washington D.C.)のデュポン・サークル(Dupont Circle)の広場で、通行人を相手に1回数ドルでチェスのゲームを行うのが、わずかながらの収入源だ。初心者から上級者まで、対戦相手を圧倒的な強さで打ち負かす。マーフィーさんのおかげで、このデュポン・サークルは、ニューヨーク(New York)のワシントン・スクエア(Washington Square)に次ぐ「チェスの名所」として知られるようになったという。

 かつて大学では数学と科学を専攻していたマーフィーさんは、これまで数々のチェス・トーナメントで優勝している。得意とするのは「ブリッツ(早差し)」と呼ばれる、1人の持ち時間が5分の試合。2005年のブリッツ世界選手権(World Blitz Chess Championship)では第15位の成績を残した。

■弱点は酒?

 いつでもホームレス暮らしというわけではないが、アルコール中毒のため路上生活に舞い戻るのが常であるという。アルコール中毒者のミーティング(Alcoholic AnonymousAA)に参加し続けているマーフィーさんは「自尊心とスピリッツ(「酒」の名前と「精神」をかけて)の間でいつも葛藤している。そして、ちょっと飲み過ぎてしまうんだ。アルコールを口にしていないときは、チェスもさえているんだが…」と話す。

■マスター目指して精進の日々

 現在の目的は、チェスの技術を磨きランクをマスターに上げること。マスターになればチェスの教授料を上げられるからだ。今の教授料は1時間20-30ドル(約2300-3500円)で、1ゲームごとに2-5(230-590円)ドルの料金を課している。「グランドマスターになれば、教授料は1時間に100-200ドルが相場だ。マスターでも最低1時間50ドル。悪くないね」

 11月22日の感謝祭の日に、フィラデルフィア(Philadelphia)でトーナメントが開催される。「このトーナメントでランクをあげられそうだ」と、マーフィーさんは自信をのぞかせた。(c)AFP/Virginie Montet