【8月29日 AFP】世界最大級のカジノリゾート「ベネチアン・マカオ(Venetian Macao)」が28日、マカオにオープンしたが、同施設を経営する米カジノ大手ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)のシェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)会長兼最高経営責任者(CEO)がオープン前夜、AFPとのインタビューで自身の半生を語った。

 アデルソン氏は現在74歳。総資産は265億ドル(約3兆円)で、米経済誌「フォーブス(Forbes)」の世界の富豪ランキングでも6番目に選ばれているが、今でも12歳のとき自転車を買う35ドルを稼ぐためボストン(Boston)の街角で新聞売りを始めたことを思い出すという。

 「12歳のその少年は自転車を買って、一番長い通りに行き、そこでレースをして、勝ったんだ」

 それ以後、ほとんど負けなしだったという。

■衰えを知らない闘争心

 最近は症例の少ない神経系の疾患でいすに座るのも手伝いが必要なほど体は弱っているが、競争心と決意は衰えていない。引退の話題は退け、闘志もあらわに矢継ぎ早に数字や鋭い質問を繰り出す。

 今回の出店は、いろいろな点でアデルソン氏最大の賭けとなった。かつて展示会やイベントなどの運営を手がけていたアデルソン氏は、みすぼらしい賭博街だったラスベガスに大規模な展示会を誘致して、大勢の参加者や娯楽に飢えた家族連れが押し寄せる新興都市へと作り変えた。同じことをマカオでも成し遂げようというのだ。
 
 自身のビジネス戦略は、現状に真っ向から立ち向かうことだというアデルソン氏は、実現できると信じて疑わず「疑いなんてものはわたしの頭にない。この確信は明白で、疑問の余地はない。覆しようがないし、絶対的に確かだ」と豪語する。

 ベネチアン・マカオへの投資総額は24億ドル(約2740億円)に上る。

■職を転々とした半生

 ウクライナ移民のタクシー運転手の父と縫製店を経営する母との間に生まれたアデルソン氏は、ニューヨークの大学を中退後、不動産ブローカーやファイナンシャルアドバイザーとして働いていた。1979年、コンピューターの見本市「コムデックス(COMDEX)」を手がけ、ここでようやく巨万の富を築くことになる。

 アデルソン氏は1平方フィート(0.0929平方メートル)当たり15セントで展示スペースを借り、同じスペースを40ドルで出展者に貸し出した。折からのコンピューターブームで、コムデックスは世界最大のコンピューター関連見本市に成長。アデルソン氏自身はパソコンの使い方も知らなかったが、この事業は大きな成功をもたらした。1995年、コムデックスはソフトバンク(Softbank)に8億6200万ドル(約973億円)で売却された。


■いよいよカジノ業界へ

 そのころにはアデルソン氏は展示会運営で磨いた手腕をもってカジノ業界へ向かっていた。この決断は業界に革命をもたらすことになる。

 アデルソン氏はラスベガスの一角にある古いサンズカジノを1億2800万ドル(約146億円)で買い取り、巨大な展示会場へと変ぼうさせ、また町全体およびカジノ業界全体に変革を及ぼした。

 2004年、アデルソン氏はラスベガス・サンズの株式を公開。当初29ドルだった株価は102ドルに上昇し、アデルソン氏を世界長者番付の一員へと押し上げた。(c)AFP/Guy Newey