【7月23日 AFP】バングラデシュ独立戦争を題材とした歴史小説『A Golden Age(『黄金の日々』の意味)』の作者、Tahmima Anamさん(31)は、独立戦争直後の1970年代に子供時代を過ごし、両親、祖父母から戦争の話を聞いて育った。

 Anamさんの処女作となるこの作品が、英国に続きこのほど祖国バングラデシュで出版された。現在ロンドン住まいのAnamさんは、バングラデシュの著名な風刺家を祖父に、大手新聞社の編集者を父に持ち、父親が当初国連に勤務していた関係で子供時代のほとんどを国外で過ごした。米国で社会人類学を学んだ後、ロンドンで作家になるためのクラスを受講し、文筆活動を開始する。

 著書執筆のため独立戦争について調査を進めるうちに、当時戦った退役兵のほとんどが家族にすら戦争体験を語っていないことに衝撃を受けたという。

 「私の著作は多くの感情を呼び起こした。これを機に、国民は戦争についての記憶を語り始めた」

 独立戦争が終わった1971年から長い年月がたった現在も、戦争が残した傷跡はほとんど癒えていないとAnamさんは言う。死者や強姦、拷問の被害者数は今も未確定のままだ。

 国民の分裂も克服されていない。独立のために戦った兵士は英雄視される一方で、イスラム勢力が「イスラムの団結」を旗印にパキスタン側についたことをめぐってはいまだに論議が分かれ、イスラム主義政党が国政選挙で支持を伸ばせない一因となっている。

 『A Golden Age』の物語は1959年に始まる。夫を失った母「Rehana Haque」の家族を中心に、その息子たちが成長して独立戦争に身を投じるまでを描き、今年出版された英国でも評判を呼んだ。

 著作は3部作構想の第1部にあたり、Anamさんはすでに2作目に取り組んでいる。(c)AFP/Helen Rowe