【7月23日 AFP】(※原作内容の結末に関する情報を一部含みますのでご注意ください。)20日のグリニッジ標準時(GMT)23時1分を機に、世界一斉発売となった『ハリー・ポッター』シリーズ完結編、『Harry Potter And The Deathly Hallows(ハリー・ポッターと死の秘宝<仮題>)』が、世界各地で売上げ記録を塗り替えている。

■各国でお祭り騒ぎ

 英国では、書店やスーパーがこの日の発売のために夜通し営業し、記録の更新に備えた。

 書籍小売大手ウォーターストーンズ(Waterstone’s)のロンドン中心部の店舗は、英国最大規模の「ハリー・ポッター・パーティー」を開催。全国各店舗に計25万人のファンが押しかけ、わずか2時間で10万部以上が売れた。

「書籍売上げ史上、これまでこんなことはなかった」と広報担当のJon Howellsさん。

 米国書店チェーンのボーダーズ(Borders)などが販売を行った米国でも事態は同様だった。

「ボーダーズの歴史上、最高の1日。これほど売れる本はこれまでなかった」とボーダーズUSAのジョージ・ジョンズ(George Jones)CEOはAFPに語った。

 ボーダーズは初日だけで120万部を世界で売り上げた。前巻第6作の初日の売上げは85万冊だったという。米国・カナダ・メキシコのボーダーズ各店舗では、英国より1時間遅れの発売開始となったが、世界のその他の店舗は、20日GMT23時1分きっかりに発売を開始した。

 ブエノスアイレス(Buenos Aires)では保護者に付き添われハリー・ポッターの格好をした子どもたちが、発売前の書店の外に長い列を作った。

 アジアでは週末、オールナイトの『ハリー・ポッター』パーティーや、ホグワーツ特急(Hogwarts Express)運行などのイベントが行われた。

 バングラデシュの大手書店ETCのMohammad Kamal Hossain氏は、1時間で1000冊が売れたが、それでも「需要が供給を上回っている状態」と語った。

 インドでは、発売前に24万冊を準備していたが、初日だけで少なくともその半分が売れたとインディアン・エクスプレス(Indian Express)紙が報じた。

■初日だけで2000万部!?

 英国のインディペンデント・オン・サンデー(Independent on Sunday)紙は、全世界の初日の売上げを合計すると2000万部になるとの予測を報じた。

『ハリー・ポッター』出版元のブルームズベリー(Bloomsbury)は、英国での最初の24時間の売上げは300万部になると予測。大手インターネット通販、アマゾン(Amazon)も世界で200万部を受注した。

 英オブザーバー(Observer)紙のロバート・マクラム(Robert McCrum)文芸部長はこの現象をこう説明する。

「『ハリー・ポッター』はただの書籍ではない。ブランドであり、フランチャイズであり、イベントでもある。さらには24時間態勢のニュースの世界における最大の速報だ」

 マクラム氏は、「紋切り型の登場人物」、時々見受けられる「活気のない段落」、「ぎこちない会話」などに文句を付けながらも、この「世界を揺るがす全7作」の完結編に「偉業だ」と賛辞の言葉を贈った。

■発売前の内容暴露も

 物語の結末が漏れるのを防ぐため、厳重な監視体制のもと発売準備が進められていた今回の全世界一斉発売も、発売前にストーリーがネット上で暴露され台無しとなった感がある。

 また、価格破壊も起こっている。一冊の希望小売価格は17.99ポンド(約4400円)だが、英国大手スーパーチェーンAsdaでは、3分の1以下の5ポンド(約1200円)で売られており、他店も同様に値段を下げているという。

■誰が死ぬのか?

 作者のJ・K・ローリング(J.K. Rowling)は、主要な登場人物のうち2人が死ぬと公表したが、その名前を明かしていなかったため、ファンの間では様々な憶測が流れていた。

 結果は、ハリーとの死闘で宿敵のヴォルデモート卿(Lord Voldemort)は死に、ハリーは最後まで生き残った。また、ホグワーツ(Hogwarts)魔法魔術学校の教師の1人が死んでしまう、という筋立てだった。

 シリーズ最終巻の最後の1行は、ハリー・ポッターにこう述懐させる。

「一生分の苦しみを経験したよ」(c)AFP/Lachlan Carmichael