【6月29日 AFP】約1万年前、人類史上初のイエネコは中東の農耕部族にネズミ捕りとして飼われていたことがDNA鑑定により明らかになった。

 米国立癌研究所(US National Cancer Institute)のスティーブン・オブライエン(Stephen O’Brien)氏らが28日、米科学誌「サイエンス(Science)」のウェブサイトで研究結果を発表した。

 これによると、現在のイラク、シリア、レバノン、イスラエルへと至る「肥沃な三日月地帯(Fertile Crescent)」に定着した農耕民族は穀物貯蔵庫を荒らすネズミに苦慮していた。その駆除目的で野生のネコ科動物を飼いならしたことが、イエネコの誕生につながったとみられる。

「当時の人類や他の動物にとって、野生のネコは非常に恐ろしくどうもうな生き物だった。しかし、人類が初めて飼いならしたイエネコは凶暴性のない個体だったと思われる。人間によくなつく一方、ネズミの駆除も、しっかり行ったと見られる」とオブライエン氏は語る。

「農耕部族によるネコ科動物の飼育は、人類史上初の生物学的実験の1つとも言える。この実験を通じて、凶暴な野生のネコが人間に良くなつく動物へと変化した」

 研究チームはさらに、10万年前にさかのぼりイエネコ版「アダムとイヴ」を突き止められるとしているが、現時点では考古学的な立証はない。

 今回の実験で研究チームは、979匹のネコからDNAサンプルを採取し、現在のイエネコと中近東を含む3大陸に生息する野生ネコの亜種5種の間での進化上のつながりの有無を確認した。

 その結果、イエネコ、野生ネコの亜種5種のいずれもが、リビアヤマネコ(F.s. libyca)を祖先に持つことがわかったという。

 研究チームには、米国のほかドイツ、イスラエル、スペイン、フランス、スコットランドの科学者らも参加した。(c)AFP/Laurent Thomet