【6月21日 AFP】国内ワイン消費量が減少し続けているフランスが、新興市場への輸出に目を向けつつある。

 南西部ボルドー(Bordeaux)で開催中の世界最大のワイン見本市「ヴィネクスポ(Vinexpo)2007」で中国とインドが注目を集める中、見本市を訪れた専門家らは中国とインドでのワインビジネスついて楽観を戒める一方、ロシア市場への期待を高めている。

 「中国は、まだワイン生産者が利益を上げられる価格で販売できる環境が整っていない」と語るのは、パリを中心に活躍するワインコンサルタントのデビッド・スカリ(David Skalli)氏。同氏はフランスや米カリフォルニア(California)州、イタリアにブドウ園を所有する。

 ボルドーのワイン生産者、ベルナール・マグレ(Bernard Magrez)氏も、中国には注意が必要だという。10年前から中国にブドウ園を所有する同氏は、「1991年に中国で事業を始めたが、利益を出すことはできなかった。現在も市場はあまり成熟していない」と苦悩を覗かせた。

 マグレ氏は、「中国人にとって、ワインは最優先ではない。彼らにはワイン文化がないのだ」と指摘する。同氏はフランスのワイン生産者に、事業の多様化には慎重であること、ビジネスを「1時間半で行ける範囲」に集中すべきだと警告する。
 「フランスのワイン業界は零細企業が多い。賢い戦略は資源を分散させないことだ」

 マグレ氏は長年、ロシアでワインや蒸留酒を扱うウィリアム・ピターズ(William Pitters)」という会社を経営していたが、2005年に同社を売却。だが一方で、近々「よい販売パートナー」と提携してビジネスを再開するという。この「よいパートナー」というのがポイントだ。

 先述のスカリ氏は、新興市場の中で特にロシアに注目する。
 「第一に、料理が欧州式だ。ロシアの肉料理『シャシリクライス(Shashlik and rice)』は、欧州のステーキ・アンド・チップスのようなものだし、ロシア料理ではあまり多くのスパイスを使わない。今のところ、中華料理やインド料理はワインに合うようにできてはいない」

 中国でのワイン販売が高級ギフトとしての需要に支えられている一方、ロシア人はワインそのものを好むという。スカリ氏は、「ロシアは将来の有望市場だ。彼らは豊かな暮らしを望んでいる。また、ロシア市場で55%のシェアを占めていたモルドバ、グルジア産ワインの禁輸措置が敷かれていることから、市場は大きく開放されている」と指摘する。

 モルドバ、グルジア産ワインの禁輸や、ワインボトルに印紙の貼付が義務づけられたことで、2006年のロシアのワイン輸入量は2億4100万リットルと、2005年の3億7900万リットルから大幅に減少した。もっともロシア政府の統計では、2005年のワイン輸入額は2003年比で2倍以上に増え、12億ドル(約1484億円)に達したと推定する。(c)AFP/Sophie Kevany